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  センチメンタルなときもあります。



『最近ここ歌舞伎町には指名手配犯の高杉晋助の出没情報が相次いでいるようで…』

テレビの花野アナがマイクを持って一生懸命ニュースを読んでいる。

「また何か企んでるんですかね、高杉さん」

「…知らねェ」

心配そうに顔を歪める新八に返す返事が素っ気なくなる。

『なまえさんの定食屋辺りを彷徨いてるらしいんでさァ』

いつかの言葉を思い出して脳裏に浮かぶ顔を消すようにジャンプを手に取る。

「心当たりがねェって言ったら嘘になるがな」

「え?」

なんでもねェよ、と言うと何か言いたそうな新八。

「神楽でも探してこいや」

不服そうにしながらも窓に打ち付ける雨をみて慌てて玄関へと向かう姿を横目に、ジャンプを顔にのせふて寝を決め込んだ。

雨の音を聞きながら思い出したくもない過去が脳裏をよぎる。

『約束したんだ、迎えにいくってな』

アイツにしてはいやに優しい顔だった。先生のことしか頭にないと思っていたが、どうやら女でもいるようだと辰馬とゲラゲラ笑ったもんだ。

『お前らには勿体ねェ女だ。なまえは』

辰馬は相変わらず笑っていたが、俺は高杉にそんな優しい顔をさせる女に興味を持った。

「なまえ、ね」

浮かぶのは先日会った彼女。まさかアイツが高杉の探している女なわけがない。どこか願うようにバサリと床に落ちたジャンプを拾うのも忘れ、天井へ手を伸ばした。

『逢わせるつもりもねぇよ』

特に銀時、お前にはな。

高杉の鋭い眼と低い声が聞こえた気がした。力なく手は落ちて、そのまま腕で顔を隠した。

「どういう意味だよ…なァ」

記憶の彼女は優しく笑っていて、何故か急に逢いたくなった。

「逢いてェな、なまえ」

女々しい自分に少し笑ってしまう。自分の女でもないし、彼女が誰を選ぼうが幸せを願わなくてはいけない。けれど今の自分にはそんなこと出来そうもなかった。

好きな女をそう簡単に諦められるほど大人でもない。身体ばかり大人になって、といつだったか新八に言われたのを思い出してその通りだと他人事のように思った。

雨はまだやみそうにない。




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