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  03


「じゃあ俺は見廻りが残ってるんで行きまさァ」

「ありがとう。もう屯所だし大丈夫だよ」

そうちゃんは私に買い物袋を渡して、申し訳なさそうに肩を竦めた。実際もう屯所に着いているし心配なんてすることなどないのだ。

そうちゃんの背中を見送ると重たい買い物袋を急いで調理場へ運ぼうと足を動かした。

「只今戻りました」

「ああ、おかえり。大変だったろ?」

「いえ、沖田隊長が見廻りのついでに運んでくださったので」

一番女中歴が長いトメさんが労りの言葉をかけてくれる。実際あの重たい荷物を運ぶとなると大変だったので、そうちゃんには御礼をしなくてはいけない。

「沖田隊長が?そりゃ良かった。最近彷徨いてるらしいからね」

「彷徨いてる?攘夷浪士ですよね」

私がそう訊ねるとトメさんは知らないのかい?と驚いた風な顔を見せた。

「高杉晋助だよ。知ってるだろ?」

「…名前だけですけど」

私が苦笑いすると、トメさんも私も見たことないよと笑って言った。

「ああ、でも月子ちゃんは見たって言ってたね」

「月子ちゃんが?」

月子ちゃん、彼女は私と同じ時期に女中として働き出した子。歳はそうちゃんと同じだと話していた。いい子なんだけれど…

「いい男でしたよぅ。すごぉーく色っぽい感じでぇ」

うっとりとした表情で話す彼女が月子ちゃん。そう、彼女はいい男に目がない。ミーハーなのだ。

「あはは…そう」

「あ、でも眼帯してましたぁ。包帯巻いてましたよぅ」

それでもいい男でしたよぅ。と頬を染めて言う。
こりゃ病気だね、なんて言うトメさんに思わず吹き出してしまった。

『かならず迎えに行くから』

一瞬記憶の隅のしんちゃんが見えた。夢で見たせいだろう、と自己解決していまだにうっとりとした表情の月子ちゃんを洗濯に誘った。

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