02
「なまえちゃん、買い物いいかい?」
「はい。マヨネーズですよね」
女中の中でも一番日が浅い私は買い出しを頼まれることが多かった。そんなとき決まって声をかけてくるのは
「俺も行きやす」
「そうちゃん」
何処からともなくやってくるそうちゃんなのだ。最近攘夷浪士が彷徨いているらしく、一人では危ないとついてきてくれているようなのだ。
しかし、一番隊の隊長さん直々に護衛してもらうのはなんだか悪い気がしたけれど「見廻りのついででさァ」と言われては仕方ない。
「いつもごめんね?」
「好きでやってることなんで気にしないでくだせェ」
優しく笑うそうちゃんを見られるのは私だけなのだと山崎くんが言っていた。きっと特別な存在なんでしょうね、と山崎くんは嬉しそうに笑っていた。
整った横顔を眺めながら、巾着を持つ手に力を込めた。
「もうすぐ旦那が迎えに来る時期になりやすね」
「そうだね。…あっという間だったなぁ」
寂しげに呟いた言葉だったけれど、そうちゃんは嬉しそうに会えなくなるわけじゃありやせんね、と笑った。
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