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  交差する思い


「一人の男として、なまえさんを護りぬきたいんでさァ」

そう言って抱き締められるその腕の強さに、そうちゃんが男の人なんだと、認識させられた気がした。
でも、きっと彼は私にお姉さんを重ねているそう思った。

「ありがとう、そうちゃん」

私が背中をぽんぽんと優しく叩くとまた少しだけ強く抱き締められた。

「でも、そうちゃんに好きな人ができたらそうもいかなくなっちゃうね」

私がそう言った後そうちゃんは体を離し「そんなことこの先ありやせんから」と少し意味深な言い方をする。

「何言ってるの、まだ若いのに」

「いつ死ぬか分からねェ身で嫁さん貰うなんて野暮な真似しやせんよ」

鬼嫁を手にコップに注ぎ、それを飲み干すそうちゃん。
土方さんもそうだった。お姉さんと気持ちが同じでもそれを突き放した。

ちらりと銀さんに視線を向ける。顔を赤らめ酒に酔う銀さんはいつものだらしない見慣れた姿。

「ゴリラー酒たんねーぞ」

「万事屋お前さっきから同じこと言ってんぞ」

「黙れこのマヨチンが!」

「ニコチンみたいに言うんじゃねー!」

彼も、そうなのだろうか。彼もまた土方さんやそうちゃんと同じように…

「旦那が気になりますかぃ?」

「えっ、いやそんなんじゃ…!」

「顔に書いてあらァ。好きなんでしょ、旦那が」

「そんなわかりやすい?」

「乙女って言うんですかねぃ、今のなまえさんを」

「もう、からかわないでよ」

からかうそうちゃんの顔は見えないまま。覗きこもうとすると、顔を上げて「旦那、飲み過ぎて潰れちゃいますぜ?」と顎で銀さんをさす。

「あ、本当だ。ちょっと行ってくるね」

その場を立って急いで銀さんのところへ向かう。だから、気付かなかった。そうちゃんの悲しげな瞳に。

「俺が出る幕はねェか」

そんな今夜は満月だ。


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