新たな情報がひとつ
神楽ちゃんと話をしている間にも段ボールは必要最低限なものだけになっているのに気づく。
「そうだ。この後時間ある?」
「時間なんていくらでもあるヨ。仕事ないアル!」
「いや、神楽ちゃん胸張って言えることじゃないから」
「そうだぞー、1週間は仕事ないからな!」
いやあんたも胸張って言うなよ!と新八くんの鋭いツッコミがはいる。
「今日私の退院祝いをやってくれるみたいなの。みんなも参加してくれるかな?」
ケーキも作るからと言えば神楽ちゃんと銀さんは喜んでと目を輝かせた。新八くんはすみませんと申し訳なさそうにいっていたけど、私はどうしても彼等を誘いたかったのだ。
「なまえちゃん、いいかい?」
「はい、どうぞ」
戸を開けたのは近藤さんだった。いつものような明るい笑顔はなくて、少し悲しげにも見えるその表情に首をかしげた。
「万事屋もそのまま聞いてくれ」
近藤さんの姿を見た銀さん達は部屋を出ようとしたけど、近藤さんはそれをとめる。素直に従うのは彼の様子がいつもと違うせいだろうか。
「泰助くんを拐った春雨の奴なんだが、どうやら過激派の高杉と一枚噛んでいるらしい」
「高杉って…あの高杉晋助ですか?」
新八くんが近藤さんに訪ねる。
「ああ。実は先日たまたまうちの奴が近くを別の事件で追ってたのがいたんだが、高杉の隣に泰助くんがいたようなんだ」
近藤さんの苦虫を潰したような顔に思わず言葉を失う。だって高杉といえば過激派の攘夷浪士。その中でも最も危険と呼ばれる男ではないか。
「泰助は怪我してねーんだろ?」
そう訪ねる銀さんの眼差しは真っ直ぐだった。
「怪我もないようだ。どんな目的なのかは未だ不明だが」
「まァ、本能に身を任せてる神楽の兄貴の傍にいるより安心なんじゃねェの。泰助、剣の腕は確かだろ」
な?と私の頭に手をのせ笑う銀さんにつられて笑顔がこぼれる。彼がそう言うだけで不思議と大丈夫だと思えてしまう。
「そうアル。銀ちゃんと皆で早く泰助迎えに行けるようにするネ!」
「僕達頑張りますから!」
「みんな…ありがとう」
とても心強い仲間がいると、そう思った。泰助、待っててね。必ずあなたを取り戻して見せるから。
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