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  用事があってきました


万事屋の店主である坂田銀時は真選組屯所を前にため息をついた。隣ではしゃぐチャイナ娘の神楽にそれを制す地味な眼鏡の新八。なぜこんな憂鬱な場所に来なければならなかったのか、答えはひとつである。

「なまえさん、呼んでもらいましょうか」

そう、彼女に会いにきたのだ。いやしかし!勘違いしては困る!
俺はただババアに「荷物持ってきてやりな」と言われて来たのである。
決してむさ苦しい男の中で、怯える可愛い子羊を心配したとかそんなことはない。
いや違うからね!銀さんなまえの体裁守りに来たとかそんなんじゃないからね!だからそんな目すんのやめろお前らァアア!

「何あれキモいアル。恋する中2の男子みたいネ」

「……珍しく鏡の前で髪整えてたからね。よっぽどなまえさんに会うのが嬉しいんだよ」

「ちげぇーし!お前ら何いってんの!?ぎぎぎ銀さんに限ってそんなことああああるわけねーだろ!」

「わかりやすすぎネ」

神楽の冷めた眼差しに抗議をすると、門からジミーくんが顔をだした。

「あれ?万事屋の旦那じゃないですか、どうしたんです?」

「ちょうどいいところに来たなお前。案内しろ」

「は?」

「いいから案内しろっつてんだヨ。ジミー」

「それがお願いする態度かお前ら!」

「ジミーじゃなくて山崎だから!」

山崎はまためんどくさいのが来たもんだとこっそりため息をつくのだった。

「なまえさんに会いに来たんですね、それならそうと」

「あああ会いたいなんて言ってねーよ!」

「もういいです銀さん」

必死に弁明する銀時をみて山崎はああ、とひとり納得する。彼もまたなまえさんを慕う人物なのだと。

「わかりやすいですねー、旦那。なまえさんが好きなん「うるせぇぇ!」

「アンタが一番うるさいよ!」

「お前もナ」

この3人が来ただけでこんなにぎやかになるのかと、山崎はまたひとつため息をこぼす。それと同時にあの二人を夢中にさせる彼女を少し羨ましく思うのだった。
言っておくが決してそっちの気があるわけではない。
山崎は案内の途中で足を止めた。目の前に沖田が真剣な表情である一点を見つめていたからだ。

「ん?なんだよ」
「さっさと歩けヨ!」
「あれ、沖田さんじゃないんですか?」

新八の言葉に視線を向けると確かに沖田だった。
同時にすすり泣く女の声。言わずもがな捜していた人物なのだとわかった。

「あァ、来てたんですかィ。山崎、土方がさがしてたぜェ」

そう言った沖田の表情は何時ものようすで、新八と神楽は首を傾げた。
銀時は、はぁとため息をこぼすとやっぱりなという事が思考を支配した。

「げっ!だ、旦那俺ちょっと行きますんで!」

沖田の言葉に慌てたように山崎が廊下を走っていく。なまえさんはここですぜ、それだけ言うと山崎と同じ方向に歩いて行くのだった。

「なまえ入るぞー」

鼻を啜り慌てて返事をする声を聞くといたたまれない気持ちになった。
それは新八や神楽も同じであったが、知らぬフリをするのが最善だと皆分かっていた。

「来てくれたんだね、ありがとう」

彼女の笑顔が何よりの救いだった。



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