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  新八視点


沖田さんに連れ出され気付けば僕らは一階の受付にいた。
慣れたような口振りでお金を払い、領収書を受け取る沖田さん。

「えらい入れ込みようじゃないの、総一郎くん」

「総悟です。当たり前じゃねェですかぃ、俺の第2の姉上でさァ」

「ふざけるな!お前なんかになまえは渡さないネ!」

ふざけた風な口調の銀さんだけど、どこか眼差しは真剣で。暴れる神楽ちゃんの頭を片手で押さえながら、沖田さんに向かって鼻で笑う。

「姉上ねェ…。そうは見えねぇけどな」

「旦那こそ、“ただの定食屋の娘”が襲われたって聞いて血相変えて飛び込んできたって聞きやしたよ」

沖田さんの挑発的な視線に思わず身震いする。なまえさんの定食屋が襲われたあの日、たまたま店に用事があった僕らは店に向かっていたのだ。途中、神楽ちゃんのお兄さんである神威さんに泰助くんが連れていかれる所を目撃して「早く行かないとあのオネーサン死ぬヨ?」そう言われた。その言葉を聞いて誰より先に動いたのは沖田さんの言う通り銀さんなのだ。

見たこともないくらい必死な顔していたのを覚えている。もちろん泰助くんの目が生気を失ったように輝きを無くしていたことも。

「飯食えなくなったら困るしぃー」

鼻をほじってそんなことを言う銀さんはいつもの銀さんだった。銀さんは気付いているのだろうか、なまえさんの前では僕らは見たこともない優しい笑顔をしているのを。

沖田さんもまたそれに気付いているのかもしれない。そういえば、と沖田さんは話しはじめた。

「しばらくの間なまえさんはウチで預かりまさァ」

「どーぞどーぞ」

「銀ちゃん、ひどいネ!私だって!」

神楽ちゃんの抗議の声を遮るようにして、銀さんは背中を向けたまま沖田さんに話す。

「一週間だ」

「は?」

「ババアがうるせーんだよ、人手が足りねぇってな。一週間で迎えに行くってなまえちゃんに言っといてくれや」

ふっと笑みがこぼれた。もちろん神楽ちゃんもだ。沖田さんはため息を一つついた後、「わかりやした」と仕方なさそうに了承した。

そのまま気だるそうに手をひらひらとふって、「んじゃ、頼むわ」と歩き出す銀さんに急いで着いていく。

「それじゃあ、沖田さん後よろしくお願いします」

頭をひとつ下げて、沖田さんの返事もまたずに走り出した。

「…勝手な人だぜぃ、本当」


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