「バカよね、あんた。」
「返す言葉もございませぬ。」

図書館で大声を出した次の日のお昼休み。二人机を向かい合わせてお昼ご飯。意外と可愛いお弁当箱を持つミクがため息をついた。私たちはあの図書館の、一ヶ月の出入り禁止をくらった。彼を見つめる、素敵な水曜日の放課後。それが一ヶ月もお預けなんて!

「ほんと、ありえないわ!」
「ありえないとか、こっちの台詞だし。あんたがバカやったせいで、私まで出禁とか。最悪。」

そう言われるとゴメンとしか言いようがない。でも、ミクがあんなこと言わなければ私だって叫ばなかった。

“彼女いるかもしれないし”

そんなこと考えた事もなかった。彼女とか。勝手にいる訳ないと思ってた。でも考えてみたら、あんなきれいな顔の男の子がモテないわけがない。

「私、あまりにもあの人のしらなすぎるわ。」

机に額をつけて、自分のアホさ加減に嘆いてみる。ちょっとだけ起き上がってミクを見ると、憐れむとか呆れるとかじゃなく、蔑んだ目で私を見ていた。

「ミク、心が痛い。ついでにミクの視線も痛い。」

およよよよ、と泣きまねをしていたら、バシッとお弁当箱の蓋で叩かれた。

「痛っ!!ちょっと、ミクー」
「鏡音レン、16歳。」
「え?」

ミクの言葉に息を飲む。もしかして、まさか、

「図書館の君?」

恐る恐る尋ねると、にんまりとた顔をミクが見せた。言わずもがな、それが正解と物語っている。

「なんで、知ってるの?まさかミク、彼にストーキングを・・・」
「あんたと一緒にしないで。」

ピシャリと切り捨てられる。しかしここでめげている場合ではない。

「ミク様!どうかこの卑しい私めに、その情報の出どころを教えていただけないでしょうか!」

これだけ下手に出れば問題ないだろう。

「それが人に物を頼む態度?床に頭が練り込むくらいに、低くお辞儀をしなさいよ。」

ドエスだ!ここに真性のドエスがいますよ!お母さんこんな子に育てた覚えないよ!?

「リン、ちょっとあんた、ロクでもない事考えてるでしょ。」
「まさか!!麗しいミク様の賛美だけを唱えておりました!」

目が怖いです、ミク姉さん。あんまりアホな事やってると本当に教えてもらえなさそうだから、そろそろ真面目に聞かなければ。

「ミク、ところでどうやってその情報を・・・。」
「土下座する気になったの?」

うわぁ。マジでドエスなんですね、姉さん。そこまで背は変わらないのに、とてつもなく見下されている気がします。

「ミク、あんまりいじめてやんなって。」

蛇に睨まれた蛙の気分を味わっていた最中、神様かと思う救いの声が耳に届いた。

「ミクオ。」
「クオちゃん!」

声の方を見ると、こんにちは、とにこやかに笑う男子の姿。初音ミクオ、ミクの従兄弟にあたる男の子だ。隣のクラスに在籍している。

「素直に教えてあげたら良いのに、ミク。」
「え!?まさか、クオちゃん、知ってるの??」

にこりと微笑んだクオちゃん。どうやら知っているみたい。これはめっけもんだ。ミクに教わるより、よっぽど安全だ。

「教えて、クオちゃん!図書館の君の事知ってるんだよね?」
「あれ、リンちゃん。さっきミクにお願いの仕方聞いてなかったっけ?」

どえす が もうひとり あらわれた !!
天使かと思った笑みはどうやら悪魔のものだったらしいですよ。

「うぅ・・・、ひどい。」
「あはは、ごめんごめん。冗談だよ。」

うなだれる私の頭をポンポンと叩くクオちゃん。

「図書館の君、鏡音レンは、ミクオの連れよ。おともだち。」

ミクが腕を組みながら言う。さらりと。

「え!?」
「僕の友達だよ。しかもクラスメイト。」

クオちゃんのクラスメイト!なんだか一気に近づいた気がするよ!つか友達の友達なんて偶然っていうか、運命感じちゃうよね!

「クオちゃんと同じ学校の子なんだね!良いなぁ!」

はて、クオちゃんの学校はどこだったか。

「リン、やっぱあんたバカだわ。」

辛辣なミクのお言葉にハッとする。

「あ、クオちゃん、隣のクラスじゃん。」

あれ?

えっと、つまり、それは、




ええぇえぇ!!ってことは!!

「図書館の君は、すぐ側に!」

そういうことだね、と笑うクオちゃんに、心底呆れ顔のミクちゃんを余所に、私の心はどうやらお祭騒ぎが始まったようです。




今まで気づかなかった奇跡!



(こんなに近くにいたのに!)




……………………

ーーー
相方キャラがいつも出てこないとか。
次はでますよ!









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