図書館の奥の机の上1番端っこが彼の指定席。黒縁のメガネに綺麗な金色の髪の彼は、難しそうな本をいつも読んでいる。何の本かは分からないけど、その本の字列を真剣に追っている。そんな姿を見ている私、鏡音リンはー

「ただのストーカーね。」

「ちょっと、ミク!恋する乙女って言ってちょうだい!」

「なぁに、それ。ストーカーって言う単語以外に合う言葉なんて思いつかないわ。」

人の乙女チックプロローグに割って入って来たのは、友人の初音ミク。本当に失礼極まりない。

今は二人、市の図書館に来ている。ここ最近の毎週水曜日は、必ずここへ通っているのだ。何を隠そう、あのメガネ男子を見るために!最初に彼を見たのも水曜日。そこであの席に座る彼を見かけた。もう、いわゆる一目惚れ?

「話した事もないのに、好きになるなんて。」

大して興味も無さそうに、ミクはため息をついた。それでも、毎度毎度付き合ってくれる彼女はとても優しい子だ。

「だってー、なんかオーラっていうか。頭良さそうでさ、かっこ良いじゃない?」

「・・・顔は、確かに整ってるわね。だから、何?だけど。」

彼を見つめる(覗く)ことのできる、素晴らしい席で二人並んで雑談をする。もちろん、小声で。前に大声を出して司書さんに怒られている。

「せめて、名前だけでも聞きたいなぁ。」

「2ヶ月も通って、名前すら分かんないとか、あんたが何したいのか分からないわ。」

冷めた目で私を見るミクに、私は口を尖らせた。

「見てるだけで良いのっ。それで私は満足ー「まぁ、彼女いるかもしれないしね。」

「え?」

ミクの発言に一瞬息をするのを止めた。彼女、ですか。そういえば考えたことがなかった。普通なら最初に気になるような事だ。

「見つめるだけで良いのっ。とか言ってるあんたなら、別に彼女の一人や二人いても構わないかぁ。」

私の声真似すらも淡々と発して、ミクは机に肘をついて、手のひらに顎を乗せた。

「や、嫌だよ!そんなの!」

思わず立ち上がって叫んでしまった。同時に座っていた椅子が大きな音を立てて後ろに倒れた。ここからも見える受付から立ち上がった女性が私たちの方へ歩いて来るのが分かった。隣を見ると、ミクが呆れ顔でため息をついている。

そして彼を見ると、何事も無いかのように、変わらず本に向かっている。彼がページの音が私の耳に届く程、館内は静まりかえっていた。



図書館の君






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続いちゃいます。









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