続きです。

「おい!レン!初音さんが呼んでるぞ!」

そう言った友人はいやにニコニコしていた。
初音、はつね。誰だったか。俺の知人にいたか、そんな人は。
とりあえず俺は、席を立つと、教室の前方後方にあるとびらを交互に見た。

「あ。」

初音ミク、さん。前方の扉の所で、無表情で立っている彼女がいた。なかなかの美少女で、クラスの男子がやたら嬉しそうに彼女をチラチラと見ている。

(なるほど、あいつが嬉しそうにしてたわけは、初音さんに声をかけられたからか。)

単純な奴め、と心の中で毒づきながら前方とびらに向かった。
心なしか、視線が痛い。

「あの、初音さん?ですよね。俺に何かー…?」

「あんたが鏡音レン?ちょっと場所を変えても良いかしら?」

そう言うが先か、彼女はすたすたと歩いていった。まぁ、場所替えは好都合だ。なぜだかここは、興味心か嫉妬かわからないが、自分にとって不利な視線が渦巻いている。

足早に歩く彼女が、ぴたりと足を止めた。それに合わせて俺も足を止める。なかなか小綺麗にしてある裏庭だが、授業開始が近いせいか誰もいない。業間に合わねぇな。

くるりと初音さんが俺の方を向いた。そういやなんだ、このシチュエーションは。なんか、まるで!

「鏡音レン!あんた、昨日リンに何したのよ!?」

「は?」

告白っぽいシチュエーションだなとか考えていた矢先、初音さんはかなり怒った様子で声を張り上げた。

「昨日、リンの家にプリントかなんか持ってたでしょ?その時よ!」

昨日、確かに鏡音リンの家に届け物をした。だが、

「そんな疑われることなんて何も。つか玄関先でしか会話してないし。」

「本当に!?」

「本当だってば!風邪で調子悪そうだったから、コンビニでよさ気なものを買いにいって、それを渡してすぐ帰ったし!」

何を疑われてるんだ、俺は。そういや鏡音リンと初音ミクは仲が良いと聞いた事はあるが。

「鏡音さんが、俺になんかされたって言ってたのかよ?」

あらぬ疑いをかけられ、すこし苛立ちの入った声を上げる。なんなんだ、この女は。

「言ってたのよ。」

「え?」

あっさりと初音さんは言った。苛立ちを含めた声で。
ナニソレ?鏡音さんが、俺に何かされたって言ったの?
ぐるぐると頭が回る。見開いた視界のさきで初音さんが、俺を睨んでいた。

「あのさ、えと、鏡音さんがなんて、」

言ってたの?と言う前に、初音さんが叫んだ。

「リンがあんたにお礼が言いたいって言ったのよ!」

「はぁ!?」

まるで罪人を見るような目で初音さんは俺を見る。鏡音さんのそのセリフに、何の問題があるのか分からなく、俺はただ閉口した。






ーーー
リンが全然出てこない罠。
もうちょい続きますよ。






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