※学パロですよ。


うちのクラスのクールビューティ。ほとんどのクラスメイトと話さず、常に一人
でいる女子。隣のクラスのえらい長い髪のツインテの女子とは仲が良いらしいが。

「ビューティっていうよりもキュートだよな、鏡音リン。」

低い背に大きな目、あれで愛想さえ良ければ完璧だ。ぽつりと呟いた一言を、友人は聞き逃さなかった。

「まぁ、そうだけどさぁ。あのツンツン具合はなんとかならんもんかね。」

ため息をもらし、その子の座る席を見た。その席に彼女の姿はない。なぜなら彼女は今日は欠席で。どうやら風邪をひいたらしい。普段休むことない様子を見ると仮病ではないのだろう。
何人かの派手な女子が、どうせ仮病だとか陰口を聞いていた。あぁいうツンとした一匹狼めいた子は何かしらにつけて嫌われる運命らしい。

「まぁ、レン。プリントの配達頑張れよ!」

ポンと背中を叩き無責任な友人は、その場を離れた。
そう、今日は欠席した彼女の家に、何枚かのプリントを届けなくてはならない使命があるのだ。

「名前が似てるってだけで、なんで俺が…。」

今度は俺がため息をついて、ファイルに挟まれたプリントを眺める。
俺が鏡音レンで、彼女は鏡音リン。親族じゃないかと本気で疑ったが、本当に赤の他人らしい。
とりあえず、名前が似てるというだけで、この任務が課せられたのだ。

担任から渡された彼女の住所と簡単な地図をポケットにしまうと俺は、席をたった。


***


彼女は一人暮らしで、駅に程近いアパートに住んでいる。

「つか一人暮らしの女の家に、男を寄越すなっての。」

とか言ってみるが、決してやましい気持ちなど発生しない。できる限り早くプリントを渡し、速攻で帰路につきたいものだ。

郵便受けに投げ込もうかも考えたが、一応手渡しのが良いだろうと判断した。
ピンポーンとインターホンからありきたりな音がした。

しばらくして「…だれ?」と小さな声が聞こえる。鏡音リンだ。

「あー、同じクラスの鏡音レンです。えと、担任に頼まれてプリント持ってきました。」

なにクラスメイトに敬語使ってんだ、俺。しかもちょっと緊張しちゃってるし。
またしばらく無言が続いて、カチャと解錠される音がした。キィとあまり好きではない音と共に、白い手が目に入った。
そしてジャージ姿に少し顔の赤い鏡音リン。そういえば風邪で欠席だっけ?調子が悪そうだ。なおさら早くお暇せねば。

「はい、プリント。風邪大丈夫か?よく寝て早く良くなれよ!」

なんてありきたりな台詞をはいて、ファイルに入ったプリントを手渡す。彼女は
小さく、どうもと言った。

なんにせよこれで任務完了だ。

「じゃあ、」

そう言って去ろうとした瞬間、俺の動きは停止した。


ぐーーー


鏡音リンから聞こえた。これはあれだ。俺もたまにある、腹の虫の鳴き声だ。

彼女を見た。
赤い顔のまま止まっている。その赤さは先程までのとは違う気がする。

「あ、もしかして、何も食べれてない?」

俺は平静を装い声をかけた。そもそも一人暮らしの病人だ。そうなんでもかんでもできるはずがない。

「べつに…っ、大丈夫…」

彼女は下を向いて言った。

「お粥とか作ってやれたらいいんだけど、俺全然料理できないんだよね。だからちょっと待ってて?何か栄養のあるもの買ってくるから。」

そう言うと彼女は顔を上げた。赤い顔のはそのままに、少し困った顔だった。
迷惑だったか、と思ったが何も食べていなさそうな彼女を放っておくこともできない。

「あ、お見舞いだから、お金とかいいからね。」そう付け足して俺はその場を離れた。

近くのコンビニへ向かう途中、少なくなる小遣いのことを考えるのと同時に、赤
くなった困り顔の鏡音リンを思い出していた。


可愛い、と思った。


ーーー
続いちゃいますよ、多分。












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