左を向けと言われ素直に左を向いた。するとそこには甘い口付けがあって、仁王はそれに目を閉じる。すぐに離れたそれに寂しさを感じていると、次には右に向けと声がした。素直に右を向くと、そこには深く濃厚な甘みが待っていて仁王の頭をどろどろと溶かしていく。

「ん…、あかやっ」
「雅治くん…」

とろりとした瞳で見つめられる。お互いにあついものを滾らせた瞳に、自然と釘付けになった。自分より身長が低いくせに余裕そうな顔をしおって。そんな可愛らしい悪態を心の中で吐く。赤也の袖をくんっと引っ張り、もっと口付けが欲しいと強請ってみる。じっと見詰め合った、その最中に乱入してきたのは左隣にいたブン太だった。

「赤也ばっか構ってんなよ、雅治」
「ブン太、」
「ちょっ丸井先輩、雅治くんのこと引っ張んなよ」

仁王を挟んだ男二人が、仁王に抱きつくとそれだけで仁王の心は幸福感で満たされる。二人の男から放たれる甘い香り。その匂いが鼻腔を通り抜けるだけで、ぼんやりと脳味噌が熱に犯されたようになる。

「うるせぇ、こういうのは年功序列なんだよぃ」
「ずるっ、こういう時だけ」
「なんだ赤也、年功序列って言葉知らねえのかよ」

ぎゅっと男三人が密集している様子は、傍から見たら暑苦しいことこの上ない。しかも真ん中にいる男が一番背が高いとあればそれは尚更で。また始まった、と二人の口論に軽くため息を吐く。その状況に堪らず、仁王は二人の名前を甘い声で呼んだ。

「ブン、赤也、」
「あ、どうした雅治」
「どうしたんすか」

ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人だが、どうやら仁王の声だけは何があっても聞き取れるらしい。一気に二つの視線が仁王へと向けられる。それにどくんと心臓が跳ねるのがわかった。二人のカーディガンの袖を握り、甘く蕩けた視線を交互に向ける。

「あんま、喧嘩せんで」

こてんと傾げられた首。子どもがするような無邪気な仕種が、二人の心を一気に冷静へと導いていく。悲しげに下げられた眉。その眉尻へ、先に赤也が口付ける。そして寂しげに潤んだ瞳へ、丸井は赤也とは逆の方向から口付けた。

「くすぐったい」

くすくすと笑う声に安易し、二人はほっと胸を撫で下ろす。仁王のこととなるとどうしても周りが見えなくなってしまう丸井と赤也は、同時に仁王へ謝罪の言葉を述べた。愛しているから故であるが、それでも本人が居るのに放っておいた自分たちが悪いと深く反省する。心からの謝罪の言葉。すると仁王は笑いながら構わないと言うもんだから、愛しさが身体全身を支配する。

「ごめん、雅治くん」
「ごめんな、雅治」

抱きついて、二人で仁王の顔へとキスの雨を降らせていく。ちゅっちゅと可愛らしいリップ音がする度、仁王の表情は甘い綿菓子のようなものに変わっていった。伏せられていた視線が、ゆっくりと上げられる。そして仁王は交互に二人へ視線を走らせた。そこで二人はその視線の元である瞳が、少しばかりの情欲の色を孕ませていることに気がつく。その色気に唾を飲むと、今度は仁王から二人へキスが送られる。

「ええよ。けど、二人とも大好きじゃき、あんま喧嘩せんで」
「ん、」
「わかったよぃ」

意識しているのかしていないのか、二人には既にどうでもいいことだった。ただ快感が欲しいと叫ぶその瞳に応えるべく、丸井と赤也は一瞬だけのアイコンタクトをとる。袖から、気がついたら腕に仁王の手が絡まっていた。それは仁王からのお誘いの行動。染まった目元に両方からキスを送り、丸井と赤也は同時に仁王を床へと押し倒した。

「雅治」
「雅治くん」

上半身を赤也が脱がし、下半身を丸井が脱がしていく。徐々に露になっていく白い肌。鎖骨が晒されると、赤也はそこへちゅっとキスを落とした。同時進行していく丸井の手も、下着ごとスラックスを取り払い晒された下肢へ手や舌を這わせる。同時に送られる快感に身震いする。快感が背筋を駆け抜けるその甘さに、仁王は連動する甘い声を上げた。

「ん、赤也…、ブン…っ」

胸の頂にたどり着いた赤也が、膨らみ始めたその果実を口へと含んだ。快楽に慣れた身体はそれだけで大きな快感を拾い、一番敏感な場所へと熱を集めていく。そして反応を示し始めた欲望を、今度は丸井が口内へと誘う。濡れた感触、上下両方から与えられる強い刺激に仁王はふるふると首を振る。

「や、もう…っ」

二人に触られているだけでも危ないと言うのに、甘い刺激を与えられるとすぐに限界を訴えてしまう。先走りを垂らし始めた欲望。熟れに熟れた果実を赤也がやわやわと歯を立て刺激をする。限界を訴えるその液体を、ブン太が不意に吸い上げた。それだけで敏感だった仁王の身体は限界を向かえ、熱い液体をブン太の口内へ吐き出す。

「んは、ぁ…ぁう」
「っ雅治…」
「雅治くん、大丈夫?」

心配の声を聞き大丈夫だと意思を伝えると、丸井と赤也は満面の笑顔を浮かべた。交互に口付けを施され、達したばかりのはずの身体はそれだけでまた欲情を始める。前戯が終わり、本番はまだまだこれから。伸ばされた臀部のその奥が、期待をしてひくりと動いたように思う。これから待ち受けるだろう更なる快感に、仁王は目を瞑り身体を奮わせた。




ゆさ様、リクエスト消化大変お待たせいたしました。年を跨いでになった挙句、長い間お待たせしてしまい申し訳ございませんでした(土下座)長い期間お待たせする結果になり、ご希望に沿えているか非常に心配ですが少しでもお楽しみいただけたら幸いです。加筆修正など受け付けておりますので、何かありましたら何なりと仰ってください。
ゆさ様、リクエスト本当にありがとうございました!

(20110403)
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