きれいなひと


※(微)裏

幸村は綺麗だ。仁王は幸村を見る度、常にそんな風に思う。例えばテニスをしている時だとか、普通に笑っているときだとか。考えれば考えるほど、幸村が美しいということは事実であると仁王は思う。

だから今目の前で、一心不乱に自分を貪る姿でさえも綺麗と思った。


「あ、あ…ぁっ」
「仁王…っ」


秘部に入り込んだ幸村の欲望が、仁王の身体を貪る。最奥を突かれれば、それだけで仁王の身体は快感に悦んだ。同時に、身体へ収まりきらなかった快感が声となって現れる。最初は恥ずかしかった声も、今では殺すことはなくなっていた。


「あ、は、…んあっ」
「仁王、気持ちいい?」
「あっ、ぁあ…っ」


何かを問われても、快感に浸食された脳みそは既にぐちゃぐちゃだ。幸村の欲望が中を行き来する度に、ぐちゅぐちゅといやらしい音がする。聴覚からも犯されていくような錯覚。仁王は生理的な涙を流しながら、幸村の背中へと腕を回した。


「ゆ、き…もっ…!」
「うん。俺も…、っ」


ラストスパートをかけるように、律動の動きが激しさが増す。今まで放っておかれた自身の欲望を幸村が不意に握ると、更に押し寄せた快感に腰をしならせた。既に何度も絶頂を迎えたというのに、仁王の欲望は萎えることなく天を向いている。


「や、あ…もっあか…っあぁあ!!」
「仁王…っ」


欲望の一番敏感な部分を扱かれ、同時に前立腺を抉られて仁王は一際高い嬌声を上げた。目の前に閃光が走ると、途端に襲ってくるのは絶頂への解放。仁王の欲望が放たれ、二人の腹を汚す。絶頂を迎えるときに幸村の欲望を締め付けたのか、最奥へ熱いモノが放たれた。


「…くっ」
「あっ、はぁ…はっ」


胎内へ感じる幸村の熱い精に、仁王は倒れ込んできた幸村の体温を全身に感じながら思う。こんな幸村を見れるのは自分だけなのだ、と。

乱れた息を整える姿も、絶頂を迎えるときに声を出さないように耐えて、快感とない交ぜになってしかめられた表情も。

仁王は、そんな幸村が愛しくてたまらなかった。性欲に身を任せ、自分の身体の上で快感に溺れ乱れている姿も、仁王しか見たことがないだろう。そんな優越感を、幸村とのセックスの度に仁王は感じていた。


「仁王」
「なん…?」


漸く落ち着いたのか、ゆっくりと掛けられた声に意識を戻す。短く返事を返してみると、想像以上に声が枯れていて笑ってしまった。


「なんだか、楽しそうだね」
「…そうかのう?」
「うん。何考えてたんだ?」


問われると同時に、まだ胎内に潜んでいた幸村の欲望が再び硬度を持ち始める。もしかしてまだやるのだろうか、という仁王の予想は当たったようで、その欲望で中を抉られた。このままでは快感に流される、と仁王は理性を飛ばす前に幸村の背中へと再び腕を回す。そして先ほどから自分の中を占領している男へ向けて、最高の笑みを浮かべた。


「そんなん、お前さんのことに決まっとろうが…っ」


どうにか言葉を発すると、顔を上げた先で幸村と視線が合う。仁王が笑っているのを確認すると、幸村もまた嬉しそうに笑っていた。



(20110124)
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