嘘コトバ(赤仁期間)

※危ない切原

好きすぎてだめなんだ。あんたのことが愛しくて、もう他の何もかもを捨てても良いくらいにあんたを欲しいと思った。手に入れて、閉じこめて、自分だけの宝物にして、その一生を俺だけのモノにしたい。そんな欲求が日々募っていく。

嗚呼、焦れったい。
綺麗なあんたは、どうして俺だけのものにならないんだ。

いつしか、この想いは苛立ちに変わっていた。俺のモノにならないあんたへの愛情の裏返し。ちゃんと愛してるんすよ、なんて言っても、あんたは全然信じてくれなかった。


「雅治くん、雅治くん、」


だから、だから。
止まらないこの想いが、溢れ出して零れていくだけのこの感情が音を立てて爆発した。爆弾の導火線に火が点いた切っ掛けはもう覚えてない。ただ火が点く寸前に感じたのは、世界が真っ白になってしまうくらいの焦燥感。このままじゃ、この人はどこかに行ってしまう。俺じゃないやつのどこかへ。

それだけは絶対に許せない。だから俺は、彼の身体を無理矢理に犯した。泣き喚こうが抵抗しようが、そんなの俺は気にしない。ただただ、あんたが欲しかっただけ。だから身体が繋がったときは嬉しかった。

やっと手に入れたと思った。
美しく愛しい彼を。
俺だけの大切な存在を。

しかし生まれてきても良さそうな幸福も優越感も中々沸き上がってはこなかった。その変わりに生まれてきたのは深い悲しみ。後悔。絶望というマイナスなものばかり。気づいた時にはもう遅く、目の前でぐったりとした彼を見て俺は漸く自分のしたことの重大さに気が付いた。


「俺、俺ね、」


ぽろぽろと、気が付けば頬を流れる辛い水。馬鹿だ馬鹿だと思えば、何故か笑いがこみ上げてきた。優越感が生まれれば楽だったのに。そんな考えは、一瞬だけ現れてすぐに彼方へ消え去った。


「あんたが、ほんとに好きなんだ」


本当の気持ちなのに、この好きという言葉が嘘に聞こえた。そして嗚呼、と俺はまた気が付いた。

どうやら俺は、本当の気持ちが全部嘘に聞こえるようにされてしまったんだ、と。

それは愛しい人へ酷いことをした俺への、神様からの罰だった。



(2011.1.16.Poncho Shiramine)
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