欲情した瞳(赤仁期間)


カリカリとペン先を走らせる音。そして耳元で響く仁王先輩の声。触れ合う肩と肩。今俺たちが居るのは仁王先輩の部屋で、俺は彼に勉強を教えてもらっていた。


「んでここに接続詞が来てな…」


英語の成績があまりに悪い、と真田副部長に見事に怒られた昨日。誰かに勉強を教えて貰え、と同じ人物に言われたのも昨日。そして、そこで勉強を教えてあげると仁王先輩が名乗り出てくれたのも昨日。だから今に至る、というわけである。


「……赤也」
「あ、なんすか」
「お前さん、ちゃんと俺の話聞いとるんか?」


怪訝そうに覗き込んで来る仁王先輩。人が説明しているのに、と目で訴えてくる。黄金の瞳が俺のことを捕らえて、思わず唾を飲み込んだ。


「聞いてますよ」
「…ふーん」


目を細めて訝しげに見てくる彼の顔を見て、聞いてませんでした、なんて言えるわけもなく。にこにこと笑って誤魔化すと、仁王先輩は下を向いてため息を吐いた。


「嘘じゃろ」
「マジっすよ」
「嘘じゃ」


今の自分の顔を見てみろ、と彼は言った。ふいっと反対の方を見た仁王先輩の耳は、何故か真っ赤。部屋に置いてある鏡を引き寄せて己の顔を見てみると、俺は彼の言葉に納得する。


「ねぇ、仁王先輩」


反対を向いた彼は、変わらずに耳が赤い。わざと狙って耳元で囁けば、仁王先輩の肩がぴくりと震えた。


「先輩、耳真っ赤っすね」
「っ…それは、」


俺の欲情した視線にさらされて、興奮しちゃいましたか。
振り返り何かを言おうとした彼の言葉が、不自然に止まる。何故かなんて、理由は簡単。俺が彼の唇を塞いだから。目元まで真っ赤にして、とろけた眼差しを向けられて、そんな顔されたらもう勉強なんて手に付かない。ゆっくりと回された腕を確認しながら、興奮した脳みそは勉強の二文字をどこかへ追いやった。



(2011.1.10.Poncho Shiramine)
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -