他愛もない話をする。二人で近くにできたファミレスに入って、ドリンクを頼む。たったそれだけの事なのに、赤也の心臓はどくどくと早鐘を打つ一方だ。 「ほんでな」 楽しそうに向かい合わせで話しているのは仁王。今日やった悪戯の内容を、彼は本当に楽しそうに話している。時々だが、部活が早く終われば二人はこうして寄り道をすることがよくあった。 「仁王先輩、」 「ん?」 柳生に成り代わって悪戯したり、真田の帽子へ花を仕込んだり。仁王の話に出てくるのは先輩の名前ばかりで、赤也はあまり面白くない。話に一区切りついたのか、ふぅっと息を吐いて飲み物に口を付けたのを見てから赤也は仁王へ話しかけた。 「可愛い」 「なっ…」 脈絡もなく言ったもんだから、仁王は理解するのに少しの時間を要したようである。だが理解するとみるみるうちに顔を赤くさせ、口元を抑えて俯いた。 「なに、言うてんじゃ」 「そんなこと言うのは俺だけだよなぁ、っていう確認っす」 途切れ途切れに言葉を繋げていく仁王を見て、赤也は思わず笑みがこぼれた。先程までの悪戯顔などもうない。今いるのは顔を赤面させ、恋人の言葉で羞恥を抱く少年だ。 「…不意打ちじゃ」 「うん。わかってる」 こくりと頷くと、仁王は恨みがましそうに赤也を睨む。目元も耳も赤いから、迫力なんて皆無だけれど。こんなやり取りすら、赤也には貴重な時間だった。 「におーせんぱい」 「…なん」 「大好きっす」 テーブル越しだから抱きしめられなくて残念だけど、と赤也は笑う。すると仁王は恥ずかしそうに目を細めて、でもその後確かに、仁王は幸せそうに笑った。 (2011.1.8.Poncho Shiramine) |