多分そうなんだろうな。ぼんやりとブン太は思う。きっと仁王雅治は自分のことが好きではない。態度、反応、表情。一括してしまえば要するに態度が違うのだ。他の人間に対する態度と、自分に対してのものが。冷めている、という表現が一番近いだろうか。 「仁王」 「なんじゃ」 そのくせ、二人はよく一緒に居た。所謂セックスフレンドという関係。名前を呼べば勿論反応する。けれど、一度も猫のような黄金の瞳がこちらを見たことはない。声だけがこちらに投げられる。 「セックス」 「したいんか?」 「おう」 特別したいというわけでもないのだけれど。扇風機の風で揺られる仁王の髪の毛を見ながらブン太は心の中で言った。 「ええよ、別に」 するとほら。仁王は軽いノリでそんなことを了承してしまうんだ。分かっていたこと。ブン太は自分に言い聞かせた。ベッドの上に寝転がっていたブン太の元へ近づいていく。 「フェラから?」 「別に、どっちでも」 「…ブン太から言うたんやから、ブン太が決めんしゃい」 ブン太の腰のあたりに跨りながら、仁王は言う。でもやっぱり、黄金の瞳はブン太を見ようとはしなかった。彼の視線はブン太の胸元あたりへ降りている。 「…じゃあ、フェラ」 「おん」 カチャカチャと金属の擦れる音がする。ベルトのバックルが外され、チャックの下ろされる音。こんな冷めた関係はいつまで続くのだろうか。無機質な音を聞きながらブン太はふと思った。 「なぁ、仁王」 「ん?」 「…やっぱ、なんもないわ」 ブン太の股間に顔を埋めながら視線だけを寄越した仁王が、不思議そうに首を傾げる。綺麗な真っ赤な舌が現れた。そしてまだ反応していない自身へ向かっていく。ぼんやりと仁王の行う行動を見ながら、ブン太は天井を見上げた。 「…気づかなきゃよかったのに」 「……なんか言うた?」 「いや、別に」 この恋心に気づかなければ、俺と仁王はただセックスするだけの相手でしかなかったのに。ブン太は自分が抱いている恋心に気づいて、酷く後悔する。 「仁王」 「んっ…な、に?」 「やっぱ襲う」 フェラをしている仁王を引き剥がして、そのまま肩を掴み押し倒す。すると仁王は驚いたように目を見開いた。そんな仁王へ、ブン太はにこりと笑う。 「馬鹿みてぇ」 吐き出した言葉に仁王は言葉を失う。中々見ることの出来ない仁王の表情。このまま何も考えられなくなればいい。そんな言葉に、ブン太の心が悲鳴を上げたような気がした。 (2010.9.3.Poncho Shiramine) |