ミルクバーの悪性について


えろいえろい。アイスってほんまにえろい。いや、正確にはアイスを食べている本人がえろいのか。財前は現在一人葛藤中だ。目の前でミルクバーに必死に噛り付いている謙也を見ながら、財前はどうにか平常心を保ちつつ、謙也がアイスを食べる光景を見ている。


(ほんまえろいえろい。なんやねんこのエロさ)
「んむっ…ぅ、これ、でっかいからめっちゃ汁垂れるんやけど…」
(ああああっ、もう!)


謙也の家に遊びに行くから、と半ば押しかけるように訪れた財前。ただで行ったら怒られるだろうか。そんなことをふと思った財前は、気を利かせようと途中のコンビニでアイスを買うことにした。最初は普通にスイカバーだとかガリガリだとか、その辺を買おうと思っていたのだ。が、ほんの小さな悪戯心と男心に揺り動かされた財前は考えた。


「…ミルクバーとか、謙也さんに食わしたらめっちゃえろいんとちゃうか?」


最初の純粋な目的を忘れ、不純な考えで頭が一杯になる。絶対にえろい。想像してガッツポーズを取りながら、とりあえず自分用に善哉を持ってレジに向かった。そして、現在謙也の部屋にいるという状況なのである。


「ぅ…財前、んなでかいの、買うてくんなや…っ」
「いやぁ、暑いかなぁと思ったもんで」


実はただ単にえろいあんたが見たかっただけです。なんてそんなことは言えるはずもなく。言ったら謙也は財前へ食べていたアイスを投げてくるだろう。自分の部屋だということも構わずに。ぺろぺろと冷たさにより、更に赤くなった舌が白い物体を這う姿は本当に官能的だった。


(ほんまアカン。ああ襲いたい…)
「あ、垂れた」


ポタリ、と白い液体が謙也の顎を伝う。そして服へと染みを作り、そこには水滴が落ちた跡が残る。思わず食べていた善哉を、口元に運ぶ手が止まった。


「あーもう。最悪やん…」
「…謙也さん」
「なん?」


もう駄目かもしれない。謙也の痴態(と財前は考えている)に財前の息子は元気に反応していた。自分が出来心で行ったことだ。しかし、ここまでのエロさは予想していなかった。財前はそう語る。


「もう、俺駄目っすわ」
「ざ、財前…?」
「謙也さんがエロ過ぎんのが、悪いんやで…っ!」


アイスが自分のナニに見えてしまったとか。解けた雫が精液に見えたとか。舐めている顔がフェラチオしている顔にそっくりだったとか。兎に角もう我慢できない。謙也の持っていたアイスを取り上げて、善哉の入った器に入れる。きっとアイスが溶けたら凄いことになっているだろうが、今の財前にはそんなことはどうでもよかった。


「ちょっ財前待ちいっ!なんでこうなんねんっ!!」
「謙也さんがエロイんが悪いんすわ」
「なんやねんそれ!?買うてきたん財前やんっ!」


尤もな意見を叫びながら抵抗するも、財前は力でねじ伏せるように謙也の腕を頭上で纏め上げる。それに本気で危機感を抱いたのか、謙也は口元をひくりと跳ね上げた。抵抗の止んだ謙也に気を良くしたのか、財前はニヤリと口元を歪ませる。


「謙也さん。これから俺の前以外でアイス食うんは、やめてくださいね」
「知らんわ!どあほー!!」


服をむしりとるが如く捲り上げた財前の男の目に、謙也は叫び声を上げながらおいしく頂かれたとか。そして謙也は思う。これからは財前の前で棒アイスを食べるのはやめようと。



(2010.8.26.Poncho Shiramine)
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