レインボーカラーに口付け



仁王の髪の色は綺麗だと思う。虹色に輝いて、銀色に輝いて。現在の色を反映させる綺麗な銀髪。そういえばどうして銀髪にしたのか、と聞いたことがなかったなと思う。まぁ実際、理由なんてどうでもいいっちゃいいんだけど。とりあえず俺は、仁王の髪が大好きだ。きらきらと今の色を反映するその髪が、仁王雅治という美しい存在を更に彩るものだと思ったから。


「仁王の髪って、綺麗だよなぁ」
「…そうか?」
「おう」


銀色がきらきらと太陽の光を反射する。今の色をつけるならきっと銀色か水色だ。手を伸ばして、後ろでちょろっと縛ってある仁王の髪の毛を手に取る。やっぱり、いつ触ってもサラサラだ。思わず笑みが零れる。するとそんな俺の顔を見て、仁王は可愛らしく首を傾げた。


「何がそんなに嬉しいんよ」
「ん…?」


そんなに嬉しそうな顔をしていたのだろうか。まぁそれは当たり前か。仁王と一緒に居られるからとか、相変わらず仁王の髪が綺麗だからとか。色々と理由があるから、それが表に出たのだろう。二人だけの空間に流れる空気。今のこの空間が嬉しいんだよと言えば、仁王はぽかんとした顔をして。でもすぐにきれいに笑った。


「ブン太」
「なんだよ」
「俺も嬉しいナリ」


それはよかった。更に俺の中の嬉しさが大きくなる。体でそれを表現するように、俺は仁王の体を抱きしめた。すると仁王は俺に身を任せるようにして、少しばかり体から力を抜き俺に寄りかかる体制になる。


「…ブン太、ええ香りするのう」
「そうか?」
「俺、この匂い好きぜよ」


すんっと俺の肩口あたりにある仁王の鼻が動く。そんなにいい匂いがするだろうか。試しに自分の匂いを嗅いでみるが、よくわからない。少しばかり悩んだ末に、結局どうでもいいかと考えを放棄した。仁王が好きならいいではないか。俺は更に腕に力を込める。すると仁王は俺の背中に腕を回しながら笑った。


「ブン太、ちょい苦しい」
「あ、わりぃ」


体を離して視線を少し落とすと、仁王とちょうど目が合う。綺麗な黄金の瞳。そして同じく綺麗な銀髪。嗚呼俺はこの美しい存在が好きなんだなと思う。そして彼は自分の物なのだとも思う。髪も、目も、容姿も、心も何もかも。そんな美しいものを独り占めしているという優越感。頭を撫でると、猫のように目を細めて気持ち良さそうに擦り寄ってくる。


「俺は、ブン太の手が好きじゃ」
「俺の手?」
「うん」


仁王は目を閉じて、彼の背中に回していた片方の俺の腕に仁王の腕を絡めた。ぎゅっと抱きしめるように、大切に抱きしめられる俺の腕。可愛いな、こいつ。仁王に対して一日一回はこう思う。俺の腕に頬を摺り寄せる仁王に、心の中がほわんと温かくなった。


「おっきくて、俺んことを安心させてくれる手じゃ」


幸せそうに笑みを浮かべて、俺に笑いかけてくる。それが凄く愛しくて可愛くて、大好き大好き大好き。その気持ちが、一杯溢れてきた。この想いが伝わるように、俺は仁王の唇へキスを落とす。柔らかいその感触に、更に愛しさが増した。


「…どんだけ俺を溺れさせるつもりなんだよ、仁王」
「いっぱいに決まっとるやろ。俺、ブン太んことが大好きじゃき」


離した唇同士。殆ど距離なんてなくて、近い距離で笑いあう。黄金の瞳が優しい色で染まって。少しだけ視線を上げてみると、丁度仁王の髪の毛が虹色になっていた。光の加減って本当に素晴らしい。だって、仁王をこんなにも綺麗にする。


「くそっ、可愛いな」
「ブン太もな」
「俺はカッコいいんだよぃ」


虹色の、大好きな銀髪に口付けて。息を吸い込んでみれば、太陽の匂いと大好きな仁王の匂い。何度もキスの雨を降らせて、愛しさを訴える。そして笑いかければほら。仁王は虹色よりも、きれいに笑った。



(20101011)
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