いつかの、いつか

(高校3年生×高校2年生)

「ようちゃんお腹痛い」
「え、大丈夫か」
「ようちゃん」
「なんだ、便所か」
「吐く」
「え、ちょ、待て!」

ここでやるな!

うぅ、と蒼白い顔をして腹を押さえる小羽を抱えて家のユニットバスに駆け込んだ。つーか吐きそうなら口元覆え。腹から何出す気だお前。



「セーフ…」

無事、カーペットの上で大惨事になる前に小羽を便器の前に下ろし、一言二言声をかけて扉を閉める。背中を擦ってやるべきかとも思ったが、首を横に振って断られた。まぁ…女子だもんな。見られたくないよな。

がんばれ、と心の中で声をかけた。





数十分後、ふらふらと小羽が俺の前に戻ってきた。額には汗、目尻にはうっすら涙が見える。

「大丈夫かよ…?」
「ようちゃん」
「なに、病院行く?」
「ううん」
「じゃあ、」

どうした、と言葉を発する前に抱きつかれた。ぎゅうう、ともうこれ絞め技じゃねぇのってくらいに。

「あかちゃん、出来たかも」
「は?………っ」

あかちゃん…。赤ちゃんって。つまり、こども?俺と、小羽の。

「…やったな!」
「ようちゃ、」

その瞬間、お互い学生だってことも忘れて、小羽をきつく抱き締めていた。だって家族になれるんだぜ。家族っつったら、一生一緒にいられ…









「…ってところで目が覚めた」
「マジかよ!」

さっきまで感動の1シーンだったにも関わらず、今目の前にいるのは腹抱えて笑う御幸で。

…そう、夢オチだったわけだ。なんてタチの悪い夢だ、畜生。

「ひー、可笑しい。…夢とはいえ高校生が子供作んなよなー」
「夢ン中じゃ、大学生設定だったんだよ!」
「設定…!ぶふ!」
「てめー、マジその顔歪ますぞ」
「はー…まぁ、待て。何年かしたら正夢になるかもしんねーじゃん?」
「…っ…俺はこう見えて計画的だ!」
「計画立ててる倉持…!」



ばーん!と御幸の机を全力で叩いて立ち上がる。その瞬間、クラス全員からの視線が俺に刺さる。ふん、こんなの日常茶飯事だ。痛くも痒くもねー。御幸の野郎はまだ肩震えさせてやがる。殴りたい。





今でも全部鮮明に覚えている、今日の夢の中の小羽。いつにも増して凄く愛しくて、大切で。ガキの分際で、だが、一生守っていこうと本気で思った。…流石に今正夢にすることは出来ないが、将来は、絶対に。

「っはー、倉持?」
「んだよ、笑い止んだか」
「うん。けど、まぁ」
「なんだよ」
「高校生の内は、しっかりヒニンをね!」
「おい眼鏡貸せ。割ってやる」
「あ、でもいつか本当にデキたときは俺が名前つけてあげようか」
「やっぱり顔を潰そう」
「やだな、倉持くん。顔がマジですよ」
「ヒャハ、マジだもの」







20120901

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