(大学2年生×短大1年生)
「………だめだ」
「え、なんで!?」
小羽は反対されると思っていなかったんだろう、目を見開いた。なんでって、そんな。だめに決まってんだろ。
海の家でバイト、なんて。
「…他にもバイトはあるだろ」
「えー、短期で海の家だよ?楽しそうだし、時給いいし、こんな好条件なバイト他にないよー!」
「とにかくだめだ」
「どうしてよう」
「どうしてもだ」
断固反対。頑として首を縦に振らず、その理由も話さない俺に、小羽の唇はどんどん尖る。
理不尽なこと言ってんのはわかってる。わかってる、けど。許せるか、他の奴に小羽の水着姿を見せるなんて。水着なんてほとんど下着と一緒じゃねぇか。ふざけんな。でも、こんなこと言いたくねーし。察してくれよ、マジで。
「…いいバイト見つけたと思ったのになぁ」
「つーかなんで急にバイト?」
「ようちゃんが部活引退したらいっぱい遊べるように貯金しておこうと思ったんだよ」
「…小羽」
「新しいの探さなきゃー」
「…しなくていい」
「え?」
バイトなんて。
「これ以上会えなくなったら俺ヤバい」
「ようちゃん?」
「ワガママなのはわかってるけどよ、オフは確実に会いてーから。バイトなんかしねーでくれ」
ぎゅう、と小羽を抱き締める。今の顔は絶対見られたくねー、なんて思っていたら腕の中の小羽が小さく笑った。
「…あんだよ」
「ようちゃんの亭主関白」
「は?」
「水着、買っちゃったから今度見せてあげる」
ようちゃんだけにね。と付け足す小羽に、バカだ、ガキだと思っていたが、こいつも女なんだなと思い知らされた。
「じゃあさ、水着着てよ、」
「うん?」
「一緒に風呂入ろうぜ」
「………」
「あ、夏だから水風呂か?」
「…ひとりで入りなよ」
「なんでだよ!」
20120810