おまつり

(大学2年生×短大1年生)

「ようちゃんようちゃん」
「あん?」
「今週の土曜日なにか予定ある?」
「部活」
「だよねぇ…」

ごろん、と俺の部屋のラグの上に小羽は寝転がった。

「腹見えてんぞ」
「わ、えっち!」
「………」

その言葉に小羽は、ばっともう半回転して俯せになった。…普段もっと恥ずかしいところをまじまじと見てんのに。

「食後のお腹はだめだってー」
「不可抗力だっつの」
「うー」
「で?」
「え?」
「土曜。なんかあんのか?」
「あぁ、」

お祭りがね、あるんだって。ようちゃんと行きたいなって思ったんだ。小羽は淡々と言った。その表情は俺からは見えない。怒っているのか、悲しんでいるのか、さみしいのか。

「悪い」
「へ?」
「祭り、行けなくて」
「いいよ、だめもとで誘ってみたんだし」
「…祭りどころかどこにも連れてってやれねーし」
「ようちゃんには野球があるからね、仕方な」

仕方ないよ。と言われる前に小羽の身体をひっくり返した。泣いているかもしれない、と思ったから。

でも、俺を見上げる小羽は泣いてなんかいなかった。ただ、本当に驚いた、という表情をしていて。

「…泣かねーのかよ」
「なんで泣くの」
「祭り連れてかねーから?」
「そんな、子どもじゃないんだから」
「泣けよ」
「えええ…!」
「それか怒れ」

いろんなとこに連れて行ってくれるような友達の彼氏と比較して、責めてもらって構わない。不満は全部ぶつけてほしい。…他の女にそんなめんどくせーこと言われたら即サヨナラだが、小羽は特別で。大切で。自分勝手だけど、なんとしてでも繋ぎ止めておきたいから。



「泣かないし、怒らないよ」
「小羽」
「野球やってるようちゃんが好きだから」
「けどよ」
「毎日野球漬けのようちゃんの、貴重な休日をこうしてわたしに使ってくれてるってだけで十分だよ」

真っ直ぐ俺の目を見ている小羽の言葉は、意地を張っているわけでもなく、無理しているわけでもないのがわかった。つまりそれは本心ということで。自然と口角があがる。

「小羽超好き」
「ようちゃんがデレた!」
「たまにはいいだろ」

この体勢のまま、愛を囁いたり、額にキスを落としたりしていると、そういう気分になってしまうのは仕方のないこと。





「超可愛い小羽ちゃん?」
「なんですか、超かっこいい洋一くん」
「襲っていい?」
「暑いからやだ」
「……………」





誘いにはフラれたが、いつもの如く実力行使で押しきる。頑張れ、俺。





20120809

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