新境地

(大学1年生×高校3年生)

「ようちゃーん」
「んー?」
「かに刺されたー」
「…カニ?」

ほらーここ。と赤くなった二の腕を見せてきた小羽。あー、蚊ね。蚊に刺された、ね。

「かゆい」
「バカ、掻くな。つーかこの部屋蚊いんのかよ」
「ううん、来る途中にやられた」
「良かった」
「よくないよ!」
「あぁ、悪い。薬塗ってやっからちょっと待ってろ」
「え」





薬を取ってきて、蓋を外すと小羽が逃げるそぶりを見せたので、問題の二の腕をがっしり掴んでそれを阻止する。


「なんで逃げんだよ」
「…薬いらないから」
「せっかく持ってきてやったのに」
「だって」
「だって何」
「…痛いでしょ」
「は?」
「刺されたとこ!いっぱい掻いちゃったもん。だから、」

あー、確かに。掻いたところに薬塗ると痛えよな。でも、塗らないと絶対また掻くだろ。お前は。

「ちょっとくらい我慢しろ」
「やだっ」
「小羽」
「ようちゃ、離して…っ」
「小羽ー」
「や……っ」
「……………」



こんなにも抵抗されるとは思わなかった。いやいやと首を振り、俺から逃れようとする小羽が新鮮で、もっと見たいと思ってしまいそうになる。…変な気分になりそうなのを振り払って薬を小羽の虫刺されの部分に塗りたくる。そう、これは純粋な親切心からくるものだ。

「ひぁっ…」
「………」
「や、だ!ようちゃん、痛い…っ」
「……………」
「…ようちゃん?」
「………悪い」

そう一言謝って素早く小羽の唇を塞いだ。文句を言われる前に。変な気分になったわ。悪いけど。


俺だって驚いている。痛がる小羽に欲情しただなんて、絶対言えない。ドン引きされる。


「な、に…?」
「しよーぜ」
「なんで急に」
「お前がいちいち可愛いのが悪い」
「何言っ…ひっ、」

ふっ、と小羽の二の腕に強めに息を吹き掛ける。咄嗟に寄せられた眉根を横目で見て、ああ、癖になっちまいそうだなと嘲笑した。





「マジで目覚めそう」
「…何に?」
「んー」
「ようちゃん?」
「試してみる?」





20120902

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