ー1ー
俺は…、たくさんの人に支えられてきた。
夢を叶えるために旅を続ける俺を支えてくれたママ。
苦楽を共にして…、一緒に旅をしてくれたタケシとヒカリ。
なんだかんだ言っても、キツい時は敵だとか味方だとか関係なく助けてくれるロケット団。
俺を助けるためにシゲルたちと協力してくれた、シロナさんとハンサムさん。
俺と正反対で、何度もぶつかり合ったけど、俺にとって今、一番のライバルのシンジ。
ライバルだったけど、違う道を歩くことを選んで…、それでも俺の夢が叶うことを信じて応援してくれるシゲル。
そして、今まで出会ってきたポケモンたち。
俺はたくさんの仲間に支えられて、ここまで来れたんだ。
…俺が周りに“伝説の御子”だって呼ばれていても、特殊な力を持っていても、結局は俺一人の力じゃ何もできない。
出来ることがあっても、一人の力じゃ限られてる。
誰かに支えてもらわなかったら…結局、出来ることなんて限られてるんだ。
そう感じた時、俺が心の奥底に封じ込めた想いが強くなって溢れだしそうになった。
俺…、やっぱりポケモンマスターになりたい…。
支えてくれたみんなに返せるのは、俺が夢を叶えるために諦めずに頑張ることだと思うから。
でも…、もしこの力を狙ってくるギンガ団みたいな奴らがまた現れた時…、仲間を危険なことに巻き込むことになるかもしれない。
俺は、俺に関わったことが原因で大切な人が危険な目にあうなんて嫌なんだ…。
夢を叶えたい。
でも、旅を続けることで、また仲間を危険に晒すことになるなんて絶対に嫌だ。
夢を叶えたいけど…、仲間を危険なことに巻き込みたくない。
…俺は…、どうしたらいいんだろう?
***
「サトシ!!」
「ピカピ!!」
「グライ!!」
「ブイブ!」
「ハガッ!!」
「ムクホー!」
「ウキャー!!」
サトシは、無事に力の奔流を消し去った。
だが、力を使った反動はサトシの意識を奪った。
力の渦が消えたことを知ったホウオウたちはシゲルとピカチュウたちと共にサトシの元に向かった。
そんなシゲルたちの目に映ったのは、ぐったりとした状態で倒れるサトシ。
それを見て、サッと青ざめたシゲルたちはサトシの元に慌てて駆け寄った。
「ジャリボーイ、最後に俺たちのことを守って…、反動を消し去ったあとにこの辺り一体を乱した衝撃をマトモに受けたんだ。」
「…君たちは逃げたんじゃなかったのか?」
「本当は弱った伝説のポケモンをゲットするつもりで隠れてたのよ。
でも、あんなに必死に頑張るジャリボーイを見ててそんなことはどうでも良くなったわ。」
「…だから、サトシは僕たちにこの場を離れるように言っていたんだ…。」
ロケット団たちの言葉にシゲルは苦痛に顔を歪めた。
最後の衝撃からロケット団を守るために体を張ったサトシは目を反らしたくなるほどにボロボロに傷ついていた。
ロケット団が悲しげに顔を歪めるのも当たり前だ。
ここまで傷ついていれば、むしろ姿を見せなければ良かったと後悔してしまいそうになる。
『大切な者を守るために御子は命を賭けた。』
悲しげに顔を歪めるシゲルたちに向かってアルセウスはおもむろにそう言った。
その言葉を聞いたシゲルたちは、瞳を揺らしながらアルセウスを見た。
『いつの時代の御子も、大切な者を守るために命を賭けた。
…その結果、命を落とした御子たちも数多く存在した。』
「サトシもその一人になると言いたいのか…?」
アルセウスの言葉を聞いてシゲルは体を震わせながらそんな言葉を返した。
『今回は、命を落とすような事態は避けられた。
だが、次も無事でいられる保証はない。』
「…何が言いたいのかハッキリしてくれないか?」
『御子の命を守るためにも、御子はこれから先は神域に身を寄せた方がいい。』
アルセウスの言葉にシゲルは強く拳を握りしめ、怒りに顔を歪めた。
[
*←前
] | [
次→#
]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -