―9―
パンッ、という何かが破裂した音と共に辺りを覆っていた強いエネルギーは消えた。
「…やった…のか?」
辺りを静寂が包み込み、シゲルとピカチュウたちは戸惑いながらも辺りを見渡した。
『まだ終わったわけではない。
強いエネルギーを消し去ったあとは、その反動が返ってくる。』
「え…?」
戸惑いから安堵したように息をはいたシゲルにミュウツーはそう言葉を発した。
ミュウツーの言葉の意味が理解出来なかったシゲルは眉を寄せながらミュウツーを見た。
「ミュウツー、ミュウ!
ホウオウ、ルギア!!
シゲルたちを頼む!」
「サトシ?
━━……ッ!うあ…ッ!」
サトシがシゲルたちのことをミュウツーに託した瞬間、さきほどまでの静寂がウソのように強い力が渦巻いた。
びりびりとした空気がシゲルたちの肌を刺激した。
「(これが反動…!?)」
「ピカピー!!」
「…!サトシ!」
ミュウツーたちの力のおかげで守られているシゲルたち。
ピカチュウの必死な声にサトシの方へ視線を向ければ、サトシはさきほどのエネルギーを消し去るために力を使いきって倒れる他のポケモンたちを守るように再び波動の力を放っていた。
さっきまで、シゲルたちに支えられなければ立っていることもままならない状態だったにも関わらず、反動から必死にポケモンたちを守るサトシの姿にシゲルは言い知れぬ不安を感じた。
「サトシ!無茶だ…!!」
サトシの元に向かおうにも、ミュウツーたちがシゲルたちを守るために球体の中に閉じ込めて守っているため、駆け出すこともできない。
『けじめ、つけないといけないんだ。』
サトシはそう言っていた。
自分が操られたせいでポケモンたちは傷つき、苦しんだ。
更に暴走したエネルギーを消すために力を借りた。
サトシの意思でしたわけではなくても、それはサトシからしたら然したる問題ではない。
自分の力のせいでポケモンたちを苦しめ、巻き込んだ。
だからサトシは自分の身の安全なんて二の次で意識を失い、倒れるポケモンたちを守る気でいる。
だが、伝説のポケモンたちでも意識を失うほどのエネルギーの反動をサトシ一人で消し去るなんて無茶だ。
『いかん…。
思っていたより反動が強い。
このままだと…お前たちを守りきることはできなくなる。』
『…一度、この場を離れた方がよさそうだ。』
「なにを言って…。」
『この場を離れる。』
「サトシをおいて逃げるというのか?
そんなこと、できるはずが!!
サトシ…!サトシーーッ!」
返ってきた反動が強すぎるのか、ミュウツーとホウオウはシゲルたちをこの場から離した方がいいと判断した。
そしてシゲルたちの意志は聞かず、シゲルたちと共にその場を離れた。
「サトシをおいて逃げるつもりはない!
ここから出してくれ!」
「ピカ一!!」
『…生身の人間が耐えられる力ではない。』
『我々が、守っていたとしてもな。』
「生身の人間って…、それじゃあサトシだって!!」
『サトシは御子だ。
他の人間とは違って身体能力はかなり高い。』
『…これまで、普通の人間とは違って高い身体能力を見たこともあるはずだ。』
「………っ!」
「ピーカ…。」
ルギアに言われ、シゲルたちは声をつまらせた。
確かにサトシの運動能力の高さに驚かされたことが何度もある。
運動神経がいいにしても、サトシの場合はそれだけでは納得しきれないほどだ。
だけど、それはシゲルたちからした大した問題ではない。
「サトシを一人にして…、サトシは無事でいられる保証はあるのかい?」
『……一人では無理だろうな。』
「なッ!?
だったら早く君たちがサトシを助けた方がいいじゃないか!」
『案ずるな。
…あの場にはアルセウスがいる。』
「…確かに…アルセウスは他のポケモンと違って倒れてはいなかったようだけど…。」
『御子は…必ずアルセウスが守る。』
「…サトシは…、無事に帰ってくると信じていいんだね?」
『ああ。』
「サトシ…。」
ホウオウの言葉にシゲルたちはサトシの方へ視線を向けた。
[
*←前
] | [
次→#
]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -