―8―
「う…ッ!
負けない…!負けたりなんか…するもんか…っ!」
強い力に圧され、体は悲鳴をあげた。
それでもサトシは力を放ち続けた。
「サトシ…!
君ならやれる!
僕は…僕たちは信じてる!」
「ピカピ!!」
「ウキャー!」
「ブイブー!」
「ムクホッ!」
「ハンガッ!」
「オーンッ!」
少し離れたところにいたシゲルたちはサトシが苦しそうな表情を浮かべていることに気付いた。
いくら苦しくても、サトシは絶対に諦めないことをシゲルたちは知っている。
だから、サトシを励まし続けた。
自分達にできることは、それくらいしかないから。
本当は悔しくてたまらない。
ただ励ましの言葉をかけることしか出来ない、無力な自分。
助けにいきたい。
でも、サトシを助けられるほどの力はない。
逆にそんなことをすれば、足手まといになってしまうから。
だから、サトシの元に駆け出したい気持ちを必死に抑えながら、サトシにエールを贈った。
「消えろ…!
消えろぉぉーーーーッ!」
少しずつエネルギーを消し去るサトシは自分に襲いかかる力が少しずつおさまってきているのを肌で感じた。
「(あと少し…。
あと少しで消せる…。
頼む…!あと少しでいい…。
もってくれ…、俺の体…!)」
強いエネルギーに圧され、サトシの膝は震えていた。
赤い鎖で操られていたサトシはすでに体力的にも精神的にも疲弊しきっていた。
精神的には気持ちを強くもてば何とかなっても、体力的な問題は気力だけではどうにもできない。
「(あと少し…あと少しなのに…!)」
あと少し。
あと少しなのにサトシはふらついていた。
膝だけでなく、体全体ががくがくと震えだしてサトシは悔しさから唇を噛み締めた。
「(もう…立ってられ…ない…!)」
限界をとうに越えた体は気力だけでは支えきれなくなっていた。
「サトシ。」
ふらりとよろめいた体を誰かが支えた。
体を支えられたサトシは驚きに目を見開き、自分の体を支えてくれた人物を見た。
「シゲ…ル…、なんで…?」
「君は一人じゃない。
僕たちがいる。」
「ピカピ。」
「ピカ…チュウ…。」
戸惑いに瞳を揺らすサトシにシゲルは優しげな表情を浮かべながらサトシの体を支えた。
次いでピカチュウもまるでサトシを支えるように小さな手でサトシの足をギュッと握った。
「ブイッ!」
「ハンガッ!!」
「ムクホッ!」
「ウッキャ!!」
「グラーイ!!」
「みんな…。」
ブイゼル、ハヤシガメ、ムクホーク、モウカザル、グライオンもサトシの体を支えるようにそっと寄り添った。
「サトシ。
確かに君は御子なのかもしれない…。
でも、その前に君はサトシという一人の人間だ。
そして君はピカチュウたちのトレーナーでもある。
ピカチュウたちはこれまで君と苦楽を共にしてきた仲間だ。
それなら、これからも苦楽を共にすればいい。
仲間はそのためにいるんだから。」
「ピーカ!!」
シゲルの言葉に、そしてにっこり笑って自分を見上げるピカチュウたちに、サトシは泣きそうになった。
「危険だって…言った…だろ…?」
「足手まといになるから、本当はあのままミュウたちに守られながら見ていれば良かったのかもしれない。
他に出来ることはないと思ってた。
でも違ってた。
サトシの体を支えるくらいなら僕たちにも出来る。
それに僕たちはサトシを信じてる。
だから、僕たちはサトシが少しでも集中できるように支えればいい。」
「………巻き込まれても…知らない…からな…。」
「覚悟の上さ。
そうだろう?みんな。」
「ピカピカ!!」
「ブイブッ!!」
「ハガッ!」
「ムクホー!!」
「グライッ!!」
「ウキャ!」
巻き込まれると言ったのに、危険を省みず助けてくれるシゲルたちに支えられながらサトシは堪えきれずに一粒の涙を流した。
「…ありがとう…。」
サトシが感謝の言葉を発した。
そしてシゲルたちに体を支えられながらサトシは最後の力を振り絞った。
[
*←前
] | [
次→#
]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -