―7―
「アルセウス、パルキア、ディアルガ、ギラティナ、エネルギーを抑え込む。
一緒にエネルギーを抑え込むために力を貸してほしい。
他のみんなは俺たちが抑えきれなかったエネルギーを消し去ってほしい。」
自分の周りに集まるポケモンたちにそう指示を飛ばしたサトシはエネルギーの中心へと両手をかざした。
「(…大丈夫…。
みんながいてくれる。
だから…、必ず消し去ってみせる…!)」
自分に言い聞かせるように心の中でそう呟いたサトシは目を閉じ、深呼吸をした。
「行くぞ、みんな!」
そして次に目を開いたサトシはエネルギーを抑え込み、消し去るために力を放った。
「……ッ!
思ってた…より…、ずっと強い…!」
自分が想像していたよりずっと強い力にサトシは眉を寄せた。
強い力に自分がのみ込まれそうになりながら、サトシはエネルギーを消し去るために必死に頑張っていた。
「俺は…、負け…ない…!
大切な…みんなを…守って…みせる…っ!」
強いエネルギーにのみ込まれそうになっても、自分の力が途切れそうになっても、サトシは決して諦めなかった。
何故なら自分の後ろには守りたい存在がいるから。
だから、負けるわけにはいかなかった。
『御子!!』
「…!」
強い力の渦に翻弄されそうになりながらも、必死にエネルギーを消し去るために力を放つ中、アルセウスは少し慌てながらサトシを呼んだ。
皆まで言わずともアルセウスが言いたいことをすぐに理解した。
「アカギさん…っ!」
サトシの目に、エネルギーの中心へと向かうアカギの姿が映った。
まるで何かにとり憑かれてしまったようにふらふらと覚束ない足取りで凄まじいエネルギーの中心へ向かうアカギにサトシは焦ったようにその名を呼んだ。
助けに行きたくても今、助けに向かえばエネルギーを抑えきれなくなってしまう。
そうなれば、暴走したエネルギーはアルセウスたちに襲いかかる。
力を貸してくれているアルセウスたちを放って助けに向かうことは出来ず、サトシは必死にアカギの名前を呼んだ。
「新世界は…私の…ものだ。
…誰にも渡しは…しない…。」
サトシの必死な声もアカギには全く届かなかった。
そして…、アカギはサトシたちの目の前でエネルギーの中心で消えてしまった。
「なん…で…。
アカギさん…、どうしてそこまで新世界に拘るんだ…。
どうして…。」
『…ッ、御子…!
精神を乱すな!
エネルギーにのみ込まれるぞ!』
「……ッ!
わかってる…!」
『…あの者はこの世界で自分が生きる意味を見出だせなかったのだろう。
…だから、誰の声も耳に届かなかった。
御子のせいではない。』
「だけど…救いたかった…。」
『全てを救うことなど出来ない。
救われる者もいれば、救われない者もいる。
世の中は、全てがうまくいくほど単純にはできていない。』
「…………。」
『御子、だからこそお前が本当に大切なものを守れ。
大切なものを守れるように心を強く持て。
…お前になら、それが出来る。』
「アルセウス…。」
アルセウスの言葉にサトシはギュッと目を閉じた。
確かにアルセウスの言う通りだ。
全てを救いたいなんて無理に決まっている。
報われないことなんて、きっとたくさんある。
だったら、アルセウスの言う通り、自分が大切だと思う人を全力で守ればいい。
1人で出来ることなんてタカが知れてるから。
だから、1人でも出来ることを精一杯していこう。
サトシはそう思った。
そのためには、今…目の前にある力の渦を消し去らなければならない。
サトシは気合いを入れるように大きく息を吐いたあと、再びエネルギーを消し去るために力を注ぎ込んだ。
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