―6―
「サトシ、僕たちにできることがあるなら…。」
「シゲルたちは、このままここにいてくれ。」
「ムクホッ!?」
「何を言って…」
「動かないでいてくれればいいから。」
「ブイブイッ!」
「グライオー!!」
「サトシ、僕たちはできることがあるなら協力したいんだ!
サトシもそれを分かっているだろう?」
「ウキャッ!!」
「ハンガッ!!」
「…これから、強いエネルギーがぶつかり合うんだ。
下手に動いたら、シゲルたちの方が危ないんだ。」
「だからって…!」
「分かってくれ、シゲル。
…簡単に済む問題じゃないんだ。」
「ピカピ…。」
『御子の言う通りだ。
“何もしない”ことが一番の協力だ。』
自分達に出来ることは精一杯協力するつもりだったシゲルとピカチュウたちはサトシの言葉に納得がいかなかった。
だが、アルセウスまでもがサトシの言葉に賛同し、シゲルは悔しそうに顔を歪めることしか出来なかった。
「ミュウ、ミュウツー、それにホウオウとルギアもシゲルたちのことを頼むよ。」
そう言うとサトシは踵を返し、エネルギーの中心へと向かった。
その背中を見つめながらシゲルは自分の無力さを痛感して拳を強く握り、俯きながら口を開いた。
「…僕は…、結局足手まといにしかならないじゃないか…。」
『…本気でそう思うか?』
「…え…っ?」
何もできないことを悔やむシゲルに沈黙を守っていたホウオウがおもむろに口を開いた。
その言葉にシゲルは弾かれたように顔をあげて、ホウオウを見つめた。
『人も…、そしてポケモンも孤独なままでは生きられない。
孤独は時に過ちを犯し、他者を傷つけることをいとわなくなる。
御子の場合、他人とは違う力を持つが故に、常に孤独と隣り合わせだ。
他人とは違う力を持つ者は孤独になるのを怖れ、力を使うことを避ける場合もある。
…だが、御子の目は孤独を恐れてはいない。
何故だかわかるか…?』
ホウオウが何故、この状況下でそのようなことを言うのかが分からず、シゲルは訝しげに眉を寄せた。
ホウオウはそんなシゲルの反応を気にすることなく、再び言葉を発した。
『お前たちがそばにいるからだ。
…守りたい存在がいるから、力を使うことを躊躇わない。』
『あれだけの力を消し去ることは容易いことではない。』
ホウオウの言葉を引き継ぐようにミュウツーがシゲルやピカチュウたちにそう言った。
ミュウツーの言葉にシゲルたちはサトシを心配そうに見つめた。
『人が自分以外の誰かを守りたいと思った時、その力は何倍にも強くなる。
今、御子を突き動かしているのは…、お前たちを守りたいという強い思いだ。』
「サトシ…。」
『守りたい存在がそばにいる。
それは御子の強い力となる。
足手まといなどという言葉で御子の思いを否定するな。』
その言葉を聞いたシゲルはもう何も言わなかった。
今、自分達にできるのはサトシを信じて待つことだけだ。
サトシなら、やり遂げてみせると信じて待つ。
本当はサトシの元に駆け出したくてたまらないが、信じて待つことがサトシの力になるならサトシの言う通り、ここでジッと待つ。
そう決めたシゲルとピカチュウたちは、サトシの背中を見つめながらただ、無事を願った。
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