―5―
「キュー!」
「きて…くれたのか…?」
サトシは目の前にいるポケモンにゆっくりと手を伸ばした。
サトシを庇ったポケモンは自分に向かって伸ばされた手を受け入れ、嬉しそうに目を細めながらサトシの手にすりよった。
「サトシ…、そのポケモンは…?」
「ラティアスって言うんだ。
前にタケシとカスミと旅をしてた時に出会ったんだ。
ラティアス…、来てくれてありがとう。」
「キュー…!」
ラティアスと同じように嬉しそうに目を細めるサトシ。
決して近い距離ではないはずなのに、自分を助けるために駆けつけてくれたラティアスの気持ちが嬉しくて仕方なかった。
「…何故…、こうもうまくいかない…?
私の綿密な計画がこうも簡単に崩れ去るとは…!」
ラティアスによって弾かれ、地に伏していたアカギは悔しそうにギリッと歯を食い縛った。
「俺は…、一人じゃない。
みんなが支えてくれる。
だから、前を見ていける。
頑張れる。」
「くだらない…。
私の計画がそんなくだらない理由で消えてたまるか!」
『サトシ…!!』
アカギの悔しそうな叫びのあと、ミュウツーが焦った様子でサトシを呼んだ。
パルキアとディアルガを助け出せたものの、問題は完全に解決したわけではない。
「この場に満ちるエネルギーが暴走しているのか…!?」
パルキアとディアルガによって生み出された強いエネルギーが暴走を始めたのだ。
「行かなきゃ!!」
エネルギーの暴走にサトシはそれを消し去るためにその中心に向かって駆け出した。
そして、サトシを追ってシゲルとピカチュウたちもエネルギーの中心に向かって駆け出した。
このまま放っておけば、暴走したエネルギーのせいで、たくさんの人やポケモンたちが犠牲になってしまう。
暴走したエネルギーを何とかしなければ根本的な解決にはならない。
サトシたちがエネルギーの中心へ駆け出したあと、アカギはニヤリと笑ったあと、小さく呟いた。
「あのエネルギーの渦の中に…、私の求めた新世界がある…。
まだだ…。まだ、私の野望は完全に崩れてしまったわけではない…。」
そう呟いたかと想うと、アカギはふらりと立ち上がったあと、サトシたちが向かったのと同じ方向に向かって歩みを進めた。
「アカギ様…!」
「無茶です!!」
「お戻りください…!」
そして、エネルギーの渦の中に向かって歩みを進めるアカギを見たサターンたちは、それを無茶だと止めたが、アカギは渦の中にある新世界しか目に映っていないのか、サターンたちの制止の声に何の反応も示さなかった。
まるで何かに取り憑かれてしまったように、ふらふらと覚束ないながらも、エネルギーの渦に向かって一歩、また一歩と進んでいった。
***
「みんな、パルキアとディアルガを助けてくれてありがとう。
パルキア、ディアルガ。
ごめん…、俺のせいで苦しい思いをさせて…本当にごめん。」
『サトシ。
パルキアもディアルガもサトシを責めるつもりは全くない。
操られていたのだから、仕方がないと。
だが、今たたされているこの状況は決していいとは言えない。
いかに私といえど、ここまで強いエネルギーを消し去ることは難しい。
御子たるサトシ、お前の力が必要になる。』
「うん。
わかってる。
ここに満ちるエネルギーを何とかしないと、取り返しのつかないことになる。
だから、必ず止めてみせる。」
『私たちも出来る限り、力を貸そう。』
「ありがとう。」
アルセウスの言葉にその場にいる伝説のポケモンたちは何も言わず、サトシの顔を見つめながら強く頷いた。
何も言わなかったが、ポケモンたちは力強い瞳をサトシに向けてきた。
だから、それだけでサトシはポケモンたちの気持ちを感じ取ることができた。
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