―15―
ヒカリたちの元へ歩みを進めていたシゲルは自分の少し前を歩くシンジに向かって口を開いた。
「シンジ、僕はやっぱりサトシとここに残るよ。」
「……お前、さっきの話を聞いていなかったのか?」
「…聞いてたよ。
聞いた上でここに残ると言っているんだ。」
眉を寄せるシンジにシゲルは揺るがない意思を示した。
訝しむシンジの顔を見つめながらシゲルは言葉を続けた。
「サトシは…、きっとこの事態が収拾したら、…御子として生きるつもりだと思う。
僕はそれを止めたい。」
「……それをアイツが望んでいなかったどうするつもりだ?」
「それはない。
…サトシはずっとポケモンマスターを目指して頑張ってきた。
僕はサトシが旅立った時からずっとポケモンたちと一緒に頑張ってきたことを知ってる。
だからこそ、サトシの心が望んでいるのは、“ポケモンマスターになる”っていう強い思いだと言えるんだ。
それを抑え込む必要なんてどこにもない。
そうだろう?」
「……そんなことは、事態が収拾してから言えばすむ話だろう。」
「…そうかもしれない。
だけどサトシの性格上、事態が収拾したら僕たちの前に現れることなく神域へ向かうと思う。
僕たちが止めることも分かっているからこそ…、何も言わず、姿を消してしまうと思う。
神域へ行ってしまったら僕たちにそこへ行く術はない。」
「…だから、そばにいてそれを阻止するというのか。」
「ああ、そうだよ。
君だってサトシがこのまま僕たちに何も言わず、姿を消すことをよしとは思わないはずだ。」
「…………ハァ…。
…好きにしろ。」
何を言ってもシゲルは残る気だと知ったシンジはため息をつき、止める意志はないことを示した。
そして、シゲルとシンジの会話を聞いていたピカチュウはシゲルのズボンの裾をくいっと引っ張ったあと、口を開いた。
「ピカッ!!
ピーカチュ!!」
「…ピカチュウ、君も一緒に来るかい?」
「ピーカッ!!」
「わかった。
一緒に行こう。
とりあえず、ヒカリたちにこの場から避難するように言っておいた方がいいだろう。
そこまでは一緒に行くよ。」
「…ああ。」
シゲルの言葉にシンジはただそんな返事を返した。
シンジは無表情だったが、シゲルの方へちらりと視線を向けたあと、静かに口を開いた。
「俺は…、アイツとシンオウリーグで戦う。
全力で戦って勝つ。
…アイツが神域へ行って帰ってこないつもりなら、それも叶わなくなる。」
「ああ。
絶対にサトシと一緒に帰ってくるよ。」
「…フン。
当たり前だ。
…必ず説得しろ。
……俺もアイツがこのまま御子として一生を終えることがいいとは思わない。」
「そうだね。
…必ず…一緒に帰ってみせる。
……必ずね。」
「………。」
サトシと一緒に帰ると言ったシゲルの瞳に力強い意思を感じてシンジはそれ以上何も言わなかった。
そしてサターンたちと戦うヒカリたちの元へ向かうべく駆け出した。
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