―1―
「ヒカリ、タケシ、シロナさん、ハンサムさん!
ここから脱出します!
急いでください!」
ギンガ団の幹部を倒したシロナたちは駆け寄ってきたシゲルとシンジの方へ視線を向けた。
だがすぐにシゲルの言葉を聞いて目を丸くした。
ここにきた目的はサトシを救出すること。
しかし、シゲルとシンジと違ってサトシは伝説のポケモンたちとパルキアとディアルガの元に向かっている。
状況をまるで把握できずにいるシロナたちは戸惑うばかりだった。
「サトシは一緒に行かないの!?」
ポッチャマを抱き抱えながらヒカリは心配そうな表情を浮かべた。
ヒカリの問いかけにシゲルは悲しそうに目を伏せたあと、口を開いた。
「…パルキアとディアルガを助けるために波動の力を使うから、巻き込まれる前に離れてほしいと言われたんだ。
ここにいたら巻き込まれる可能性が高い。
だから…。」
「危険だから離れろって言うの!?
私は…サトシを置いていくことなんて出来ないわ!!
サトシは確かに“伝説の御子”なのかもしれない…。
でも、サトシを置いていく理由になんてならないわ!」
「俺もヒカリと同意見だ。
サトシの無茶を何度も見てきたからこそ、置いていくことは出来ない。
シゲル、どうしてサトシを置いていこうなんて考えれるんだ!?」
シゲルの言葉に真っ向から反対したヒカリとタケシ。
そう言ってくると予想していたシゲルは真剣な表情を浮かべながら口を開いた。
「…僕が残る。
だから君たちは行ってくれ。
サトシの気持ちを…分かってやってほしいんだ。」
「………シゲルくん。
あなたは最初からそのつもりで私達に逃げるように言ったのね?
私達が納得して逃げるはずがないことも、サトシくんの想いを無駄にしないためにも、あなたが残ることで納得してもらおうと考えた。
違う?」
シロナはシゲルの思いを感じ取ったようでシゲルにそう言った。
「………そんな大層な理由はありません。
でも、時は一刻を争うのは事実です。
だから、みんなには退却してほしい。」
「私だって残るわ!!」
「足手まといを増やしてどうする?」
「足手まとい!?」
シゲルは他のメンバーに避難するよう言うが、ヒカリたちとてサトシを置いて逃げることは出来ないと首を振った。
そんなヒカリの言葉をばっさり切り捨てたのはシゲルではなく、シンジだった。
その言葉にヒカリは怒りを露にしながらシンジを睨んだ。
「間違ってないだろう。
ここにいる誰もが足手まといにしかならない。
足手まといを増やしてアイツの負担を増やすつもりか?
…アイツを信じて待つことくらいしか、今の俺たちには出来ない。
…冷静になって物事を考えろ。」
「…………。」
シンジの言葉にヒカリは何も言えなくなった。
確かに今の自分ではサトシの足手まといにしかならない。
でも、仲間としてサトシを置いていくことが出来ない。
それを察しているから、シゲルは1人残ると言ったのだ。
サトシの元に自分が残ることで安心させたいのだろうと思った。
もちろん、シゲル自身もサトシのそばにいたいという考えもあるのだろうが、少なからずシゲルの優しさを知って、ヒカリたちは何も言えず、瞳を揺らすことしか出来なかった。
「サトシを信じてほしい。」
「………シゲル、サトシのことを頼む。
サトシと一緒に必ず帰ってきてくれ。」
「もちろんだよ。
サトシと必ず一緒に帰る。
サトシが仮に嫌がったとしても必ず連れ帰る。」
「…信じてるから。」
「うん。」
信じると言ったヒカリは不安そうな表情を浮かべていて、シゲルはその不安を少しでも軽減できたらいいとヒカリの言葉に強く頷いた。
「…みんな。
………行きましょう。」
シロナに言われ、ヒカリたちは後ろ髪引かる思いを抱えながらも、その場から立ち去った。
「必ず…サトシと一緒に帰る。」
一人残ったシゲルは伝説のポケモンたちと一緒にいるサトシの背中を見つめながらそう呟いた。
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