―13―
ピカチュウの呼びかけに反応したのか、今まで意識を失っていたサトシがゆっくりと目を開いた。
「━━サトシ!!
僕がわかるかい?」
「…シゲル…。」
目を覚ましたサトシは精神的にも体力的にも、かなり消耗しているようで、その瞳にいつもの元気はなかった。
「よかった…。
本当によかった…サトシ…。」
「おれ…、ギンガ団に捕まって…、それから…。
………………!
おれ…、ポケモンたちにヒドイこと…した…。」
「それは違う、サトシ。
君はアカギに操られていたんだ。
君の意思でされたことじゃない。」
「でも…、おれのせいで…!」
「…嘆いている暇があったら、まずはこの状況を何とかする方法を考えろ。
…パルキアとディアルガが赤い鎖に捕らわれ、力が暴走している。
この辺りを覆うようにエネルギーも高まっている。
…どうすれば、あの力からパルキアたちを救い出せるか、お前は知っているのか?
知っているなら、行動に移せ。」
「………シンジ…。
うん…、そうだよな…。
赤い鎖の力から俺がパルキアとディアルガを救い出す。」
「サトシ!!
だけど、今の君は体力をかなり消耗している。
何をするつもりかは知らないけど、あまり無茶は…!」
「今しないでいつするんだよ?
いくら赤い鎖の力で操られていたとしても、俺のせいでポケモンたちが傷ついたり苦しんでるのは事実なんだ。
だからこそ、この事態を俺が何とかしないといけないんだ。」
体力が衰え、ふらついているとは思えないほどに力強い意思をその瞳に宿すサトシにシゲルはそれ以上何も言うことができなかった。
「…サトシはいつだってそうだ。
ポケモンのために無理、無茶、無謀は当たり前。
僕がその度にどれだけ心配しているか…、君は分かってない。
…でも、サトシは昔から決めたことは誰が何を言っても曲げなかった。
…サトシ、僕たちは何をすればいい?」
「…タケシたちと一緒にこの場を離れてくれ。」
「…何を言ってるんだい?
まさか君一人でこの事態を何とかしようなんて考えているんじゃないだろうね?」
「…波動の力を使うことになる。
それに巻き込みたくないんだ。」
「…巻き込む…って…。」
「そんなに強い力を使わないとこの事態を打破できないというのか?」
「ああ。
もう、パルキアとディアルガの力が暴走してて、ここには強い力が集まってる。
俺は…、その暴走を止めるためにここに残らないといけないんだ。」
「お前一人で何とかできると思っているのか!?」
「…誰が一人でやるなんて言ったんだよ?」
シゲルだけでなく、シンジまでもサトシの無茶苦茶な提案を聞き入れることはできないと声をあげた。
だが、サトシは笑みを浮かべながら“一人ではない”と返した。
その言葉に怪訝そうな表情を浮かべていたシゲルとシンジはサトシが言った言葉の意味をすぐに理解した。
━━サトシの背後から次々と伝説のポケモンたちが姿を見せた。
ミュウ、ミュウツー、サンダー、ファイヤー、フリーザー、ルギア、セレビィ、マナフィー、レックウザ、カイオーガ、グラードン、そして…ホウオウとアルセウス。
伝説と呼ばれるポケモンたちがサトシの呼びかけに応えるように姿を見せた。
だが、逆に伝説のポケモンたちのその数が事態は急を要することを示していて、シゲルもシンジも唖然とするばかりだった。
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