―9―
言葉を発するのを待つサターンたちを見たアカギは静かに口を開いた。
「完全に解放するわけではない。
御子のみが知る情報を聞き出すために御子の記憶のみを解き放てば、こちらの問いかけに答えるだろう。」
「そのようなことが可能なのですか?」
「…多少のリスクは伴う。
記憶だけでなく、御子の心まで解放する可能性もある。
だが、仮に御子の心まで解放してしまったとしても赤い鎖の力でねじ伏せてしまえばいい。」
「なるほど…。
予想外の展開が起こった状況でそのような方法を思い付かれるなんて…、さすがアカギ様ですね。」
「はじめよう。」
「そうはさせない!!」
赤い鎖の力を使おうとしたアカギを制止するような声が響いた。
声のした方に視線を向ければ、息をきらしながらギンガ団を強く睨むシゲルたちがいた。
「…ほう…?
エンテイたちに勝ったというのか?
これは面白い。」
「あなたはどれだけヒドイことをしているのか、まるで分かってないわ!
あなたがその力を使えば使うほどサトシとポケモンたちが苦しむのよ!?」
「それがどうした?
目的を果たすための犠牲はいとわない。」
「…サトシは返してもらう。」
「断る。
この計画を迅速に進めるためにこの子供の力は必要不可欠だ。」
「それなら力ずくで助け出すまでだ!
行け!リングマ!ドダイトス!!」
「お願い、パチリス!ミミロル!!」
「グレッグル!!ピンプク!!ウソッキー!
お前たちも頼む!!」
サトシを返す気がないと知ったシンジ、ヒカリ、タケシはポケモンを繰り出し、ギンガ団と対峙した。
「サターン、マーズ、ジュピター、相手をしてやれ。」
「はっ!!」
「手加減しないわよ!」
「後悔すればいいわ!」
「シゲル、シロナさん。
先に行ってください。」
「ヒカリちゃん…?」
「ヒカリの言う通りです。
“あの場所”をギンガ団が知る前にサトシを助け出さなければ大変なことになります。
ここは俺達に任せて行ってください。」
「この程度の雑魚、すぐに片付けるから、さっさと行け。」
ヒカリの言葉に目を見開き、固まるシゲルとシロナにタケシとシンジも先に向かうように言った。
確かに3人の言う通り、時は一刻を争う状況にある。
だが、ギンガ団の幹部を相手に無事でいられるのかが分からず、シゲルもシロナも心配そうな表情を浮かべた。
それを感じ取ったシンジはため息をこぼしたあと、口を開いた。
「…ここに来た目的は何だ?
目的が果たせなければここに来た意味はない。
さっきも言ったが、この程度の雑魚はすぐに倒せる。
分かったら、さっさと行け!!
……アイツにはお前が必要なんだよ。」
最後に呟かれた小さな言葉。
それはシロナではなく、シゲルのみに向けられていたものだった。
「…シロナさん、行きましょう。」
「本当に…大丈夫なの?」
「彼なら…いえ、彼らなら大丈夫です。」
「…………わかったわ。
でも…この先へはシンジくん、あなたがシゲルくんと一緒に行ってくれないかしら?」
「…シロナさん?」
「サトシくんを思う気持ちはきっと私よりも、シゲルくんとシンジくんの方が強いわ。
だから…、ここは私に任せてもらえないかしら?」
「……シロナさん…。」
微笑みを浮かべながらシロナはシゲルとシンジを先に向かわせることを選んだ。
シロナの選択に最初こそ驚いていたシゲルとシンジもすぐに力強く頷いたかと思うと、サトシの元に向かうために駆け出した。
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