―6―
「フリーザーたち…、大丈夫かしら…?」
「…大丈夫よ、ヒカリちゃん。
恐らく…勝つのはフリーザーたちよ。」
「え…?」
「フリーザーたちの戦いを見れば分かるわ。」
心配そうな表情を浮かべるヒカリにシロナはフリーザーたちの勝利を確信しているような言葉を発した。
シロナの確信に満ちた発言にヒカリは目を瞬かせた。
「フリーザーたちは正気を保ったまま戦っているわ。
逆にスイクンたちは赤い鎖の力に必死に抗いながら戦っているわ。
そうなればスイクンたちはただ苦しみから逃れるために攻撃するばかりで、防御するほど冷静な判断ができるはずがないわ。」
シロナの言葉にヒカリはフリーザーたちの方に視線を向けた。
確かにシロナの言う通り、スイクンたちは苦しみから逃れるために攻撃をするだけで、その攻撃はフリーザーたちを狙っているというよりは苦しみから逃れるためだけに攻撃を放っているようにしか見えない。
そんな攻撃をくらうほど、フリーザーたちは遅くはない。
ひらりと舞うようにかわしながら、加減をしつつスイクンたちに攻撃をしている。
そんな姿を見れば、シロナがフリーザーたちの勝利を確信するのも頷ける。
フリーザーたちが勝利をおさめるのにさして時間はかからなかった。
動く体力もなくなり、地に横たわったスイクンたち。
それを見たシゲルたちは心配そうにスイクンたちを見つめた。
「…スイクンたちは…、大丈夫なのかしら…?」
「…スイクンたちも戦いたくて戦ったわけじゃないからな…。」
ヒカリとタケシの呟きにシゲルたちはただ、複雑な表情を浮かべて見つめることしか出来なかった。
サトシが望んだことではないにしても、サトシの力で無理矢理操られたスイクンたちを助けたいと思うのは至極当然のことだ。
…それに、自分のせいでポケモンたちが苦しんだとサトシが知れば、サトシは強く自分を責めるだろう。
それは何としても避けたいところだった。
『━━…ファイヤー、サンダー、フリーザー、感謝する。
スイクンたちを、神域へ送り…御子の呪縛から解き放つ。
力を貸してくれ。』
シゲルたちの心配を察知したのか定かではないが、辺りにアルセウスの声が響いた。
「アルセウス!
スイクンたちは…大丈夫なの!?」
再び響いたアルセウスの声にヒカリはそう声をあげた。
『心配はいらない。
神域へと送ることができれば、スイクンたちも直に正気を取り戻す。
…そのためにはある程度弱らせなければならなかった。』
「だから、フリーザーたちに助けてもらうように頼んだんだね。」
『…私やホウオウが神域を出て…もし万が一にでも私達まで操られるようなことになれば、もう手のうちようがない。』
「…そうだね。
君達までギンガ団の思いのままに操られてしまえば、それこそ世界が終わってしまう可能性もある。」
『…御子の居場所を突き止め、一刻も早く御子を呪縛から解き放ってくれ。』
「わかった。」
アルセウスの話を聞く限り、神域にいればスイクンたちがこれ以上苦しむことはない。
正気に戻ると知ったシゲルたちは安堵の息を吐いた。
「とにかく、僕たちに出来ることはサトシをあの赤い鎖の力から助け出すこと。
あれのせいでサトシはギンガ団に操られているのだから。」
「…ドンカラスとムクホーク…、サトシの居場所を突き止められたかしら…?」
「…とにかく、俺たちは先に進もう。
フリーザーたちのおかげで道は開けた。」
「そうね。
フリーザー、サンダー、ファイヤー。
ありがとう。
スイクンたちのこと…、よろしく頼むわね。」
シロナにそう言われたフリーザーたちは羽を広げて鳴いた。
それを了承したものと判断したシゲルたちはムクホークたちが戻ってくる前に少しでも先に進もうとサトシとギンガ団が消えていった方角へと歩みを進めたのだった。
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