―2―
ホウオウの力により、神域から元の世界へ戻ってきたシゲルたち。
ホウオウが元の世界に戻す際に考えてくれていたのだろう。
シゲルたちの目の前には背を向けた状態でギンガ団と共にいるサトシがいた。
「━━サトシ…ッ!」
「……………………。」
サトシの背中を見たシゲルは声を張り上げてその名を呼んだ。
しかし、サトシは振り返ることなくギンガ団たちが乗り込むヘリコプターに向かって歩みを進めるだけだった。
シゲルの声は間違いなくサトシに届いているはずだ。
それなのにサトシは何の反応も返さなかった。
それだけで、シゲルたちはすぐに察した。
サトシの隣で不適な笑みを浮かべるギンガ団のボス、アカギがサトシに何かをしたのだということを。
「…サトシに何をした?」
怒りに震えながらシゲルはアカギに向かってそう問いかけた。
「お前たちも諦めが悪いな。
御子は我々の手に堕ちた。
それだけだ。」
しかし、アカギは笑みを浮かべながらそう言うだけでシゲルの問いかけに答えることはなかった。
そんなアカギの態度はシゲルの怒りを爆発させるには十分だった。
「何をしたのか聞いてるんだ!
ブラッキー、シャドーボール!」
怒りのままにボールを手にし、中からブラッキーを出したシゲルは指示を飛ばした。
アカギに向かって放たれたシャドーボールはまっすぐにアカギに飛んでいく。
しかし、アカギも周りにいるマーズたちも慌てることなく、笑みを浮かべるだけだった。
「どうして…?」
「サト…シ…?」
シゲルたちは目の前に起こった出来事に強く困惑した。
アカギに向かって放たれたシャドーボールから守ったのは、アカギ本人でも、幹部連中でもなく…、ギンガ団に捕われているサトシだった。
サトシは無言でアカギの前に立ち、波動を使ってそれを防いで守った。
そして何より驚いたのは、サトシの瞳は虚ろで、ただぼんやりと佇むだけだったこと。
まるで人形のようなそれにシゲルたちはただ戸惑うばかりだった。
「…あなた…、サトシに何をしたの…?」
いち早く正気を取り戻したハナコは怒りに震えながらアカギにさきほどシゲルがした同じ問いかけをした。
「ほう…?
御子に救われたその身を再び、危険に曝しにきたか。」
「答えなさい!
サトシに何をしたの!?」
ハナコがいることに気付いたアカギは面白いものを見るような目でハナコを見た。
いつまで経っても質問に答えようとしないアカギにハナコは珍しく声を荒げながら問い詰めた。
「……いいだろう。
痛い目にあう前に教えてやろう。」
「アカギ様!?
わざわざそのようなことをなさらなくても…!」
「かまわん。
今、御子は完全に我々ギンガ団の手中にある。
御子の力を手にすることが出来た今、機嫌もいい。
教えてやろう。」
「ですが…。」
「分からないのか?
御子は今、私の意のままに動く人形だ。
この力さえあれば、何も恐るるにたらん。」
「……アカギ様がそうおっしゃるのであれば…。」
満足げに笑みを浮かべるアカギはシゲルたちに向かって語り始めた…。
[
*←前
] | [
次→#
]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -