―10―
ハナコの口から語られた事実にその場は重苦しい空気に包まれた。
そんな重苦しい空気が辺りを支配する中、アルセウスが静かに口を開いた。
『……ホウオウ、今…お前の心はどんな感情に支配されている?
人間は確かに愚かな生き物だ。
お前の言う通り、何度も同じ失敗を繰り返す。
己の欲のままに他者を蹴落とし、何も感じない者も確かに存在する。
そして、お前が強い絶望や憎しみに支配されたのは、人間の汚いところしか知らないままだったからだろう。
だが…、御子や…彼等は違う。
大切な者のために身を挺して戦うことができる。
…大切な何かを守るために、戦うことが悪いことだと……今でも感じるか?
御子が…、母親を守るためにその身を投げ出したことを…醜いと感じるか?』
『……………。』
アルセウスはホウオウに向かって語りかけるように言った。
その言葉にホウオウは空を仰ぎ…、そっと目を閉じた。
『……人間は醜い生き物だ。
過ちを繰り返すだけでなく…、例え後悔しても、時と共に忘れ…、同じ過ちを何度でも繰り返す。
だからいつの時代でも争いが耐えない。』
ホウオウは誰に語るわけでもなく、まるで呟くようにぽつりぽつりと言葉を発した。
そしてホウオウの言葉にシゲルたちはただ黙って耳を傾けていた。
人間の醜いところばかりを見てきたホウオウの言葉をシゲルたちは軽い気持ちで聞くことはできなかった。
そんなシゲルたちの思いを感じ取ったのか、そうではないのかは分からないが、空を仰いでいたホウオウはシゲルたちの方へ視線を向け、再び口を開いた。
『…━━だが…、争いの全てが醜いわけではないと今では思う。
………今は……お前たちになら…、力を貸してもいいと思える。
…御子を救うために力を貸す。
御子の仲間たちよ、御子を助けるために共に戦おう。』
「…ホウオウ…!」
「ありがとう…!」
「必ずサトシを助け出そう!」
ホウオウの言葉にシゲルたちは安堵したような表情を浮かべた。
頑なだったホウオウが自分達に少しではあるが、心を開いてくれたことが嬉しかった。
『……いかん…!』
「…ミュウツー…?」
「どうかしたのか?」
『何かに…意志を奪われる…!この感覚は…ッ!』
ホウオウの言葉に後押しされるように、サトシを再び助け出すために団結力を高め合った瞬間、ミュウツーは苦しそうな表情を浮かべながら、よろめいた。
様子が変わったことに気付いたヒカリやタケシは心配そうにミュウツーを見つめた。
ミュウツーは苦しそうに顔を歪めたままだった。
そして、それを見たアルセウスやホウオウは何か思い当たることでもあるのか、静かに顔を見合わせ、頷き合った。
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