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「あなたたち…私をどうするつもり…?」
サトシがシゲルたちを神域へと招き入れ少ししてから1人の女性…――ハナコがギンガ団に拘束された状態で、アカギの前に立っていた。
「…御子の母親か。
御子をおびき出すエサとして、おあつらえむきな人間だな。」
「御子?
おびき出すエサ…?」
アカギの言葉にハナコは眉を寄せながらそう言葉を返した。
そしてアカギはハナコの言葉にニヤリと笑いながら口を開いた。
「そうだ。
お前の息子の力がどうしても必要だ。
そのためのエサになってもらう。」
「息子ってまさか…、サトシのこと!?
あの子に何をするつもりなの!?」
「そう問われて素直に答えると思うか?」
「サトシは私の大切な息子よ!
あの子に何かしたら、許さないわ!」
「はははは!
これは面白い。
ポケモントレーナーでもないというのに、どう許さないつもりだ?」
「母親の思いをバカにしないで!」
「…無駄話はこの辺にして、御子をおびき出すために、少し痛めつけてやろう。
マーズ、やれ!」
「はっ!」
何が目的でサトシを狙っているかは分からないハナコだったが、自分を捕らえた彼等の態度を見て、サトシを捕らえて何か危険なことをさせようとしていることを嫌でも察した。
拘束され、抵抗も無意味に終わろうとも、ハナコは強気な態度を変えることはなかった。
そんなハナコの相手をする時間も惜しいのか、アカギはマーズに痛めつけるよう、指示した。
「ブニャット、行きなさい!
きりさくよ!」
「━━…ッ!」
ブニャットを繰り出したマーズは拘束され、身動きが取れないハナコに向かって、きりさくを指示した。
自分に迫ってくるブニャットを見て、ハナコは衝撃に備えてギュッと目を閉じた。
「━━…させない!」
「ブニャァァアァアッ!」
目を閉じたハナコは聞き覚えのある声と、ブニャットの悲鳴のような声を聞き、閉じていた目を恐る恐る開けた。
「…サト…シ…。」
目を開けたハナコは、自分の大切な息子の背中を見て、戸惑いながらも名前を呼んだ。
「ママ、大丈夫…?」
「サトシ…、どうしてここに…?」
「待って、すぐに縄をほどくから。」
サトシは困惑したままのハナコの拘束を解きながら口を開いた。
「ママ、巻き込んでごめん…。」
「何の話をしているの?
サトシ、あなたが何故…彼等に狙われているの?」
「それは…。」
「こうも簡単におびき寄せられるとは…。
母親を捕らえたのは間違いではなかったようだな。」
事情を説明しようとしたサトシの言葉を遮り、アカギは笑みを浮かべながらそう言った。
アカギの声にサトシはキッと睨むと、アカギに向かって口を開いた。
「ママは関係ないだろ!?
関係ないママまで巻き込むな!」
「使えるものを使って何が悪い?」
「なんだと!?」
「その前に気にかけることは他にもあるだろう?」
「…何の話だよ!?」
不吉な笑みを浮かべながら言ったアカギに、サトシは眉を寄せ意味が分からないと言わんばかりに問い返した。
「足手まといを抱えながら、この人数を相手にどう戦うつもりだ?」
「━━……!!」
アカギの言葉に周りを見渡したサトシは目を見開いた。
サトシとハナコはギンガ団に囲まれてしまっていた。
とても逃げ場があるようには見えなかった。
伝説のポケモンに力を借りようにも、そのためには意識を集中し、波動を使って呼びかけなければならない。
今の状況では、それをさせてはくれないだろう。
そう察したサトシは悔しげに歯を食いしばった。
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