―7―
『…何故、お前たちはわざわざ危険な場所へ飛び込もうとする?
ほとぼりが冷めるまで安全な場所にいればいいものを。』
「安全な場所に隠れていて、大切な人が守れるのかい?」
「私達は仲間よ。
仲間を見捨てて、楽な方に逃げることなんて出来ないわ!」
「仲間だから守りたい。
守りたいから戦うんだ。」
『………………。
……人間とは愚かな生き物だ。
…だが…。』
『待て、ホウオウ。
…神域にまた御子以外の人間が来る。』
シゲルたちのひたむきな思いにホウオウが何かを言おうとした時、アルセウスが新たな訪問者の気配を感じ取った。
アルセウスの視線を追ってシゲルたちの視線は自然に同じ方へと向いた。
「サトシ…ッ!!」
アルセウスの視線の先に光が集まり、神域へと姿を現した人物はサトシの名を呼び、悲しげな表情を浮かべ、悲痛な声をあげた。
その人物を見たシゲルは大きく目を見開いた。
「サトシのママさん!?」
神域へと姿を現したのは、サトシの母…ハナコだった。
ハナコは自分を呼ぶ声を聞いてシゲルたちの方へ視線を向けた。
「ママさん…。」
ハナコの表情を見たシゲルは言葉を失った。
いつもサトシの良き理解者で、いつも笑顔のハナコの顔は涙で濡れていた。
「ママさん、何があったんですか?」
「タケシくん…。
サトシが…、サトシが…ッ!」
初めてハナコが取り乱している姿を見たタケシは縋り付くように泣くハナコを見て困惑した。
細かい話までは分からないが、ハナコの様子からサトシに何かあったことは容易に想像できた。
ハナコの様子を見たシゲルたちは、強い胸騒ぎに襲われた。
「ママさん、一体何があったのか…教えていただけませんか?」
「……サトシは…、サトシは私を助けるために…っ!」
「落ち着いてください。
私達が必ずサトシくんを助け出してみせます。
そのためには正確な情報が必要なんです。
何があったのか…、教えていただけませんか?」
「…貴女は?」
「シロナと言います。
サトシくんとは旅の途中で知り合いました。
他にも、ここにいる全員がサトシくんを助けたいと強く思っています。
お願いします。
説明して…いただけますか?」
シロナの優しい声音に錯乱していたハナコは次第に落ち着きを取り戻していった。
更に気持ちを落ち着かせるために深い深呼吸をしたあと、ハナコは静かに語りはじめた。
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