―5―
「ホウオウ、ギンガ団と戦うために力を貸してほしいんだ。」
その頃、サトシはホウオウの前に立ちながら助力を乞うていた。
『人間の醜い争いに手を貸すつもりはない。』
「これは大切な人を守るためにも必要なことなんだ!」
『…人間のためにわざわざ醜い争いに身を投じろと言うのか?』
「…大切な人を守るために戦わなきゃいけない時だってある。
俺だって戦いたくない。」
『人間は醜い生き物だ。
私利私欲のために、他者を傷つけ、苦しめても何とも思わない生き物だ。
そんな醜い生き物のために力を貸すつもりは毛頭ない。』
「なんで分かってくれないんだよ!?
このままじゃ、ポケモンたちだって苦しむことになる可能性だってあるんだ!
俺は…大切な人を守るためなら、戦う!」
『…御子もしょせんは人間だ。
その心は醜さで埋め尽くされている。』
「…大切な人を守りたいという想いが醜いって言うのか?
そんなはずないだろ!?
誰かを守りたいって想いのどこが醜いって言うんだよ!?」
サトシはホウオウの言葉に眉を寄せながらそう返した。
大切な人を守りたいという想いが醜いはずがない。
仮にそれが理由で戦うことになったとしても、守るためには戦わなければならないことだってあるはずだとサトシは思っていた。
だから、ホウオウの全てを否定するような物言いが許せなかったのだろう。
『醜いからこそ、人間は争い続ける。
いつの時代も争いが耐えない。
戦いの中でどれだけたくさんの屍を踏み越えてきたのかをすぐに忘れる。
だから、いつになっても争いが絶えることがない。』
「俺は戦うことの全てが醜いとは思わない!」
『…話にならない。
人とは、誰かを守りたいなどとキレイごとを並べながらも、自分が危険にさらされれば、他者を見捨て、切り捨てる生き物だ。
守りたいなどと言っても結局、最後は自分を最優先する。』
「俺は…!
俺は…、絶対に大切な人を見捨てたりしない!
俺だけじゃない!
俺の仲間だってそうだ!
ホウオウは人間にも温かいところがあることを知らなすぎる!」
『……これ以上話すだけ無駄だ。』
「ホウオウの分からず屋…!
なんでそんな…、…………!
や、やめろ…。
関係ない人を巻き込むなッ!!」
『……御子?』
ホウオウに必死に自分の思いを伝えていたサトシは途中で何かを感じ取ったのか、慌てて制止の声をあげた。
その異変に気付いたホウオウは訝しげにサトシを見つめた。
サトシの言葉はホウオウに対して言っているものではないように感じてならなかった。
「……もう、たくさんだ…!
必ず…助ける!」
『…御子…ッ!』
ホウオウの声も届いていないのか、サトシは神域から姿を消した。
『…一体…、御子は何を感じ取ったというのだ…?』
その場に残されたホウオウはサトシのただならぬ様子に戸惑い、ぽつりとそう呟いた。
その呟きは誰に聞かれることもなく、虚しく部屋に響いて消えていった…。
[
*←前
] | [
次→#
]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -