―10―
「ついたよ。」
サトシの声を耳にしたシゲルたちは閉じていた目をそっと開けた。
「……ここは…。」
「…うわぁ…。」
「………。」
目を開いたシゲルたちは言葉を失った。
辺りはさきほどまでの景色とは明らかに違っていた。
虹色に輝く太陽の光。
見たこともないほどに透き通る湖。
まるでシゲルたちを守るように優しく包んでくれているような温かさを感じさせる木々。
目に映る全てがシゲルたちの言葉を奪った。
出るのは感嘆の声くらいだった。
『御子、大丈夫か…?』
ただただ驚くばかりのシゲルたちの耳にミュウツーの気遣わしげな声が聞こえてきた。
そちらに視線を向ければ、膝をつき、荒い呼吸を繰り返すサトシの姿があった。
「サトシ…!?」
それに気付いたシゲルたちは慌ててサトシの元に駆け寄った。
「ごめん…、さすがに全員はちょっと…きつかったみたい…だ…。」
『当たり前だ。
少し休んだ方がいい。』
「ん…、ごめん…。
ミュウツー…、少しの間…、みんなを頼むよ…。」
『…わかった。』
ミュウツーに体を支えられていたサトシはミュウツーが了承したのを確認すると、そのまま目を閉じた。
「ミュウツー、サトシは…サトシは大丈夫なの…?」
少し顔色の悪いサトシをヒカリは心配そうに見つめながら問いかけた。
『…ここは御子と伝説、神と呼ばれるポケモン以外が足を踏み入れるはずのない場所…。
神域と呼ばれる場所だ。
そんな場所に本来、足を踏み入れるべきではない者を招き入れれば、それは御子の体に負担として返ってくる。
人数が多い分、御子の負担も大きくなる。』
「そんな…!
サトシくんはそれを知った上で私達をここに?」
『当たり前だ。
私が反対した理由の1つだ。』
「そうだったのか…。」
ミュウツーの腕の中で目を閉じるサトシをシゲルたちは気遣わしげに見つめた。
そこまでして、自分達を守ろうとしてくれたサトシの期待を裏切るような真似はしたくない。
シゲルたちは心の中で強くそう思った。
『…ついてこい。
今はアルセウスがいないが…、神域を守るある伝説のポケモンに報告はしなければならない。』
「…ある伝説のポケモン…?」
『先に言っておくが、下手なことは口走らない方が身のためだ。
…死にたくなければな。』
不吉さを感じるミュウツーの言葉にごくりと唾を飲み込みながらシゲルたちはミュウツーの言う“伝説のポケモン”に会うためにミュウツーについていくことにした。
サトシが意識を失った今、神域のことを知っているのはミュウツーしかいない。
他になす術もないシゲルたちは戸惑いながらも、ただ黙ってミュウツーの後をついて歩いた。
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