―7―
「バカな…。」
ハンサムは驚きに満ちた表情を浮かべてサトシを見た。
サトシは麻痺なおしを口にしてすぐ、何事もなかったかのように立ち上がった。
いくら何でも効力を発揮するのが早過ぎる。
薬というのは効力を発揮するのが早ければ早いほど、強いものが多い。
しかし、タケシが渡したのはごく一般的なもので、ハンサムが知る限り効力を発揮するまでどんなに早くても30分はかかるものなのに、サトシはすぐに立ち上がった。
先ほどまで、誰かに支えてもらわなければ動けなかったサトシ。
それが普通に支えもなく立ち上がるのだから驚くのも無理はない。
「…すぐに助けてもらうように頼まないと…。」
ハンサムたちが戸惑っていることなど気にもとめてないのか、立ち上がったサトシはすぐに意識を集中するために目を閉じた。
***
その頃、ギンガ団のポケモンたちを前に戦っていたミュウツーは悔しそうにアカギを睨みながら口を開いた。
『数だけで私をおしてくるとはな…。』
「いくら強くとも、生き物には必ず疲労は蓄積される。
お前が強いならそうするしかないだろう?
安心しろ。まだ殺しはしない。
あの子供をおびき出す道具になってもらわなければならないからな。」
『……伝説の御子に手出しはさせん。』
「戯れ事を。
やれ…!!」
空を覆い尽くすほどのポケモンに囲まれ、苦虫を潰したような表情を浮かべるミュウツー。
しかし、ギンガ団たちのポケモンがミュウツーに向かって攻撃を放つ前に大きな雷が落ちた。
「ミュミュミュミュッ!」
何が起こったのか分からず、困惑していたミュウツーは以前、どこかで聞いた声を耳にした。
『ミュウ…。』
「ミュミュ!」
そう…、ミュウツーを助けるために雷を落としたのは、ミュウだった。
ミュウ本人は楽しそうに口に手を押さえて笑っているが、今の攻撃でギンガ団のポケモンの半数以上が戦闘不能となって地に伏していた。
『…なるほど…。
伝説の御子の力か…。
フ、まさかお前と協力して戦うことになるとはな…。』
「ミュミュ!ミュウ!」
『言われなくとも、道は自分で切り開く!!』
ミュウが気合いを入れるように鳴いたあと、ミュウツーも再び力を込めて拳を握った。
***
「ふぅ…。」
「サトシ…?」
何か疲れたような息を吐いたサトシにシゲルは声をかけた。
「もう大丈夫。
ミュウツーを助けてもらうように他のポケモンに頼んだから。」
「他のポケモンって誰だ?」
「ん?
ミュウだけど?」
「ミュ、ミュウって、あのミュウ!?」
「…?
他に誰がいるんだ?」
シンジの問いかけにサトシはさらりとミュウに頼んだと告げた。
世界一珍しいと言われるポケモンに助けを頼んだというのだから驚いて当たり前なのだが、サトシ自身はその重要性をまるで理解していないのか、きょとんとした表情を浮かべている。
「…まあ、サトシは伝説と呼ばれるポケモンに幾度となく会っているから…その辺の感覚は麻痺してるのかもしれないね。」
「あのさ、伝説のポケモンって呼ばれててもピカチュウたちと何も変わらない。俺達と何も変わらない。
同じこの星に生きる仲間だろ?」
「……全くお前は…。」
何が違うんだ?と不思議そうに首を傾げるサトシにシンジは思わず苦笑した。
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