―6―
「ミュウツー…、大丈夫かしら…?」
「…わからない。
いくらミュウツーでもあんなにたくさんのポケモンを前に無事でいられる保証はない。」
「だったら何でミュウツーを1人にしたの!?
サトシは大丈夫だと思ったから任せたんじゃなかったの!?」
「ヒカリ、落ち着け。」
「だって…、だって…。」
「だから早く俺の麻痺を治してほしいんだ。
そうしたら…ミュウツーを助けてほしいって頼むこともできるから。」
「…サトシくん、…どういうこと…?」
ミュウツーを心配するあまり、口調が荒くなってしまったヒカリをなだめるタケシ。
しかし、サトシはミュウツーを助けるためにも早く麻痺を治してほしいと言った。
その意味深な言葉にシロナは思わずその意味を問いかけていた。
シロナの問いかけにサトシは深く息をはいたあと、静かに口を開いた。
「力が目覚めたんだ。」
少しの間のあと、サトシはそう言った。
「力って…“伝説の御子”の力のことかい?」
ハンサムの言葉にサトシは小さく、だけどしっかりと頷いた後、口を開いた。
「はい。
何て言ったらいいのか分からないけど…、ミュウツーが来てくれた時に確信したんです。
俺は…“伝説の御子”で…力もその時に目覚めたんだって…。
ただ…、麻痺した体では…意識を集中できなくて…、だから…。」
「わかった。
誰か、麻痺なおしは持っていないか?」
「持ってはいますが…、もう少しギンガ団のアジトから離れたところの方が…。」
「今は時間がない。
いつ追っ手が来るか分からない今、サトシくんの力が必要だ。」
「…わかりました。
ちょっと待ってくれ、サトシ。」
「うん…。」
ハンサムの説得により、タケシは自分の荷物をあさり、目的のものを探し始めた。
サトシはシゲルとシンジに体を支えられながらタケシが麻痺なおしを出すのを待った。
サトシも本当はミュウツーが心配で仕方がない。
いくら圧倒的な強さをもつミュウツーでも数が多ければ危険なことはわかっていた。
だが、ミュウツーとてその危険を承知の上で逃げるように言った。
ミュウツーは人の手により生まれた命。
いくら人の手から生まれた命だとしても、ミュウツーにだって疲労はたまるはず。
だから一刻も早くミュウツーを助け出すために自分が自由に動けるようにならなければならない。
そんな思いが渦巻いてサトシも内心は落ち着かなかった。
だが、ここで騒いだところで何も変わらない。
その前にしなければならないことがある。
サトシはそう自分に言い聞かせながら、タケシが目的のものを出してくるのを待った。
「あった!
サトシ、麻痺なおしだ!」
「ありがとう…。」
麻痺をして動けないサトシの変わりにシゲルがそれを受け取り、サトシの口に運んだ。
サトシもそれを口にして、深く深呼吸した。
「薬が効くまで少し時間がかかる。
それまで、各自、警戒を怠らないように。」
「大丈夫。
もう痺れはなくなったから。」
サトシが飲んだ麻痺なおしは効力を発揮するまで少しの時間を要する。
警戒を解かないように言ったハンサムの声を遮り、サトシはそんな言葉を返した。
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