―5―
「サトシ…!」
「みんな…。」
ミュウツーの言葉通り、少ししてシゲルに背負われながらサトシがヒカリたちの前に姿を現した。
万全な状態でないにしろ、サトシの無事な姿を見たヒカリたちは安堵の息をもらした。
「よかった…。
よかった…、無事で…。」
「心配…かけて…、ごめん…。」
「今は早くここから離れた方がいい。」
「そうね。
早くサトシくんの麻痺も治してあげたいし、早く離れましょう。」
「そうはいかない。」
一刻も早くギンガ団のアジトから離れようと踵を返したシゲルたちは、第三者の声を聞き、思わず立ち止まった。
「アカギさん…?」
声の主は以前、旅の途中で会ったアカギだった。
アカギがギンガ団のボスだとは知らないタケシとヒカリは少し戸惑ったような表情を浮かべて見つめた。
「…待って、タケシくん、ヒカリちゃん。
彼が着ている服…、あれは間違いなくギンガ団のものよ。
まさか…あなたが…!」
「察しの通り、私がギンガ団のボスだ。
困るな。私の野望を叶える道具を持ち出されては。」
「サトシは道具じゃないわ!」
「サトシの力を何に使わせるつもりだ!?」
アカギの言葉にヒカリもタケシも強く睨みながら、そう言葉を返した。
しかし、アカギはそんな2人の態度など気にもとめず、ニヤリと不適な笑みを浮かべながらサトシを見たあと口を開いた。
「新世界を作る。
そのために必要なのだ。
さあ、痛い目にあいたくなければ、その子供を差し出せ。」
「誰がアンタなんかに…!」
「サトシは渡さない!!」
「強気でいるが、お前たちのポケモンはすでに疲れきっている。
そして我がギンガ団はまだまだいる。
みすみす命を捨てるか?」
『私の存在に気付いていないようだな。
私がむざむざ“伝説の御子”を渡しはしない。』
「…お前は…、ポケモンか…?」
『やるなら、私とて容赦はしない。
お前たちは逃げろ。
ここは私が引き受ける。』
「ミュウツー!!
でも…っ!」
『“伝説の御子”の力が悪用されるようなことになれば、世界が滅びを迎える可能性もある。
私はこの世界で生きていたい。
そのためなら…、我が力、惜しむことなく使おう。』
「…ミュウツー…、約束してくれ。
必ず…必ず俺達のところに帰ってくるって。」
ギンガ団の相手を引き受けると言ったミュウツーにヒカリが戸惑いの声をあげた。
しかし、ミュウツーは伝説の御子を…、サトシを守るために力を使うことにためらいはないと返した。
そんなミュウツーの言葉にサトシはミュウツーに約束をもちかけた。
ミュウツーを見るサトシの目は強い意志を感じて、ミュウツーはただ黙って頷いた。
サトシの期待に応える。
言葉はなくとも、そう言っているように感じた。
「ありがとう、ミュウツー。
待ってる。
…みんな、行こう」
「う、うん…。」
サトシに逃げるように言われ、ヒカリたちは心配そうにミュウツーを見ながらもその場から逃げるように立ち去った。
「逃がすな!
捕えろ!」
『ここから先は通さん。
我が力を前に平伏すがいい!』
ミュウツーは襲い掛かってくるポケモンたちを睨みながらそう言うと、戦闘を開始した。
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