―1―
「シゲル…、シンジ…。」
「サトシ、助けにきたよ。
僕が君の力を悪い奴らに悪用させたりしない!」
「…世話の焼けるやつだ…。」
「ダメ…だ。
…シゲル…、シンジ…!
早く…逃げ…て…。」
「…いやだ!
僕はサトシのそばにいる!」
「シゲル……。」
「ここで逃げたら何のためにここに来たのか分からないだろう。
そんなことも分からないなんて…本当に使えないな。」
「シンジ…。」
強い意志を瞳に宿し、サトシを見つめるシゲルとシンジ。
サトシは俯き、声を震わせながらシゲルとシンジの名を呟いた。
「なるほど…、入口でのバトルはお前たちが侵入したことを隠すための陽動だったってわけか」
「サトシは返してもらう!」
「そうはいかない!
コイツは我等の野望を果たすために必要だからな!」
「サトシは道具じゃない!
行け!カメックス!」
「ガメーッ!」
サターンの言葉にシゲルは怒りに拳を震わせ、モンスターボールからカメックスを出した。
「そっちがその気ならこっちも考えがある。
行け!ドクロッグ!
あいつらが邪魔をしたらすぐ、この子供にどくづきだ!」
「……!?
なッ!?卑怯だぞ!正々堂々と戦え!」
「正々堂々?
バカを言うな。
そんなことをすればこちらに勝ち目はない!
数でいけば圧倒的にそっちが有利なんだからな!」
「く…っ!」
笑みを浮かべるサターンと、サトシにいつでもどくづきを食らわせられるよう構えるドクロッグにシゲルたちは身動きが全く取れなくなってしまった。
「…どうする?」
「……戻れ、カメックス!」
挑発するようにシゲルを見るサターンにシゲルは悔しそうに顔を歪めながらカメックスをボールに戻した。
「それでいい。
あとをつけられないようにお前たちには痛い目にあってもらうか。
ドクロッグ、行くぞ!」
「や、めろ…!
みんなに…シゲルに…手を出すな…!」
「お前は黙ってそこで見ていろ!」
「あぐ…っ!」
ニヤリと笑うサターンにサトシは制止の声をあげた。
しかし、サターンはそれを素直に聞いてくれるような相手ではない。
麻痺して動けないサトシを乱暴に壁に叩きつけるように離したサターンは目の前にいるシゲルたちを不吉な笑みを浮かべて見た。
その笑みを見たサトシは悲しみや絶望が混じったような表情を浮かべた。
「(ダメだ…!
俺のせいでシゲルたちが苦しむなんて…!
そんなの…絶対にダメだ!
誰か…、誰か…!
…みんなを助けてくれ…!)」
目の前にいる大切な人を守りたい。
サトシはそう強く思った。
そして、その思いに比例するようにサトシは自分の中にある“何か”が強くなっていくように感じた。
それが何か…、サトシにはもう分かっていた。
━━力の目覚めが近いのだと…。
「行け、ドクロッグ!
あいつらを痛めつけてやれ!」
「(…俺は…、もう逃げないから…!
みんなを守る力を…貸してくれ…!
仲間を……守れる力を…!)」
サトシが心の中で何かに語りかけるように強く目を閉じ、強く思った時だった。
「Σ…なッ!?
お前は…なんだ!?
ポケモン…か?」
サターンの驚きに満ちた声がサトシの耳に届いたのは…。
その声に恐る恐る、閉じていた目を開けたサトシは大きく目を見開いた。
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