―8―
「…“伝説の御子”の力に目覚めていなくても、ポケモンたちは無意識に引き付けられると聞いているわ。
サトシくんの場合、あの人柄もポケモンたちに好かれる要因の一つだとは思うけど…、まさかサトシくんが“伝説の御子”だったなんて…。」
「サトシが最近悩んでいたのは、きっと…このことだったのね…。」
「一つ聞いてもいいかしら?
…サトシくんは、波動を使えたりしない?」
「波動…?」
「“伝説の御子”の言い伝えで…波動を使えるようになってきたら…力の目覚めが近いことになるって聞いているの。」
「波動…といえば…。」
「まだ何かあるの、タケシ?」
シロナに問われたタケシは眉を寄せて、再び呟いた。
タケシはこの中で一番長く、サトシと旅を共にしてきている。
それはサトシについての情報を一番知り得ることにも繋がる。
それを知っているからこそ、タケシの言葉を流すわけにはいかなかった。
「サトシは…あの波動使いのアーロン様と同じ波動を持っているみたいなんだ。」
「アーロン様って…あの伝説の!?」
「ああ。
それを知った時の出来事なんだが…その時、ある脅威が迫ってて…サトシはアーロン様が使っていた手袋を使ってアーロン様の相棒…ルカリオと共に波動を使って脅威を回避したことがあるんだ。
だからアーロン様の手袋を使いながらだったとしても…サトシには波動を使う素質があることになる…。
これでサトシが“伝説の御子”である可能性はまた高くなった…。
いや、…サトシが“伝説の御子”であるという事実に間違いはないんだろうな…。」
「…なるほどね…。
サトシくんの力は少しずつ目覚め始めていると見て間違いはなさそうね。」
「あ…っ!
そういえば…!さっき私達を助けてくれた時…!」
「……!」
何かに気付いたように顔をあげつつ発したヒカリの声にシゲルたちもハッとした表情を浮かべた。
「どうしたの?」
「…サトシ…、さっきギンガ団の攻撃から私達を守ってくれたんです。
その時…、私達は自分たちに向けられた攻撃に目を閉じてたので…直接見たわけじゃないんですけど…。」
「ギンガ団の幹部、ジュピターは『スカタンクのどくどくを、波動を使って止めるなんて。』…そう言っていました。」
「…それじゃあ…、サトシくんは力が目覚めている可能性があると言うのか?」
「あるいは…目覚めが近いか…。
どちらにしても、サトシくんを助け出さないと…大変なことになるわ。
ギンガ団が…サトシくんの力を悪用しようとしているのは間違いがないはずだし…、すぐにサトシくんの行方を追わなきゃ…!」
時間は残されていないことを知ったシロナは慌てた様子でそう言った。
もし、サトシがまだ“伝説の御子”としての力に目覚めていなければ、ギンガ団はそれを待たなければならなかった。
それならば時間に多少なりの余裕が出来ると考えていた。
だが、甘かった。
サトシの力は目覚めようとしている。
もし、サトシの力が目覚めれば、ギンガ団は何としてでもサトシに力を使わせるだろう。
サトシが危ない。
「私の方でも情報を集めてみよう。
…一刻も早くサトシくんを助け出さねば…、サトシくんの身が危険だ!」
「猛毒を浴びて、更に麻痺までさせたサトシくんを長距離で移動させるとは考えにくいわ。
きっと…ギンガ団のアジトはそんなに遠くないところにあるはずよ。」
「僕の方もポケモンたちにサトシを捜してもらうように頼んでみます。」
「サトシ…、お願い…。
無事でいて…!」
胸の前で手を組み、サトシの無事を強く願うヒカリの横でシンジはただ、サトシが消えた空を見つめていた。
それをシゲルが見つめていたことにシンジは気付いていない…。
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