―7―
「サトシ…っ、サトシィ…。」
「…………。」
縛られたまま、廃工場に取り残されたシゲルたち。
ヒカリはただ…涙をぽろぽろと流しながら泣いていた。
「……みんな、無事かい!?」
「大丈夫…!?」
重い空気が辺りを支配する中、誰かの声がシゲルたちの耳に届いた。
「…、シロナさん!?」
「それに…ハンサムさん!?」
声のした方に視線を向けると、シロナとハンサムが駆け寄ってくるところだった。
「どうしてここに…?」
「彼らから話を聞いてね。」
「彼ら…?」
人が寄りつかないような廃工場に現れたシロナとハンサムにタケシとヒカリは驚きを隠しきれない様子で問いかけた。
そんな二人にハンサムはちらりと視線を向けながらある人たちから話を聞いてここまで来たと言った。
ハンサムの視線を追ったシゲルたちは目を見開いた。
「ロケット団!!」
そこにはロケット団がいた。
「…どの面さげて、ここに来た?」
「ちょっと!!私達がここにあんたたちがいることを教えなかったら…あんたたちは捕まったままだったのよ?」
「もう少し感謝してもいいはずだニャ!」
「あれ?
ジャリボーイは?」
怒りを隠すことなく、ロケット団を睨みながら言ったシンジの言葉にムサシたちは感謝しろと返した。
途中でサトシがいないことに気付いたコジロウがきょろきょろと周りを見回しながらサトシの姿を捜した。
「……サトシは…。」
表情を曇らせ、俯くヒカリにシロナたちは何か良からぬことが起こったのだと察した。
拘束されたシゲルたちの縄をほどき、シロナたちは話を聞くことにした。
***
「そんな…!
サトシくんが…ギンガ団に…。」
「サトシは…きっと俺達を守るために…。」
「だが、何故サトシくんがギンガ団に狙われたんだ?
君たちは何か知っているのか?」
シゲルたちから話を聞いたシロナとハンサム。
シゲルたちの話からして、ロケット団は何かを知っているのだと察したハンサムはロケット団に情報提供を求めた。
「駅弁さんが知りたいって言うなら話すけど…、ジャリボーイは何か…“伝説の御子”って言われる存在らしい。」
「“伝説の御子”…!?
サトシくんが、そうだって言うの?」
コジロウから告げられた事実にシロナは目を見開いた。
「シロナさんは…その“伝説の御子”ってのが何か知ってるんですか?」
ひどく驚いた様子のシロナにヒカリは自分の頭に浮かんだ疑問を投げかけた。
ヒカリの問いかけにシロナは深いため息をついた後、静かに語り始めた。
「私の故郷では…“伝説の御子”という存在について語り継がれているわ。
世界に一人だけ存在する“伝説の御子”…。
その存在は“伝説”と呼ばれるポケモンを引き付け…意のままに操ることも出来る…。
もちろん、シンオウに伝わる“神”と呼ばれるポケモンも例外ではないわ。
ギンガ団の目的はまだ分からないけど…、もしどこかでギンガ団がサトシくんが、“伝説の御子”だと知ったなら…執拗に狙っていた理由も頷けるわ。」
「伝説の…ポケモン…。」
「タケシくんはそれについて心当たりがあるの?」
考え込むように顎に手を沿え、呟かれた言葉にシロナはタケシの方へ視線を向けた。
「…サトシは…、これまで数々のポケモンたちと出会ってきました。
その中に“伝説”と呼ばれるポケモンたちにも、たくさん会ってきました。」
「たくさんって…どんなポケモンに会ってきたの?」
「…ミュウ、それとミュウの情報を元に人間から作られたミュウツー、ルギア、サンダー、ファイヤー、フリーザー、スイクン、セレビィにマナフィー、ラティオス、ラティアス…、レックウザ、ダークライ、シェイミ…カイオーガやグラードン…あげだしたらキリがないくらいです…。
旅立ったその日にサトシはホウオウにも会った、と言っていました。
ホウオウのことも含めて俺がサトシと一緒に旅をしていなかった時に出会ったとサトシから聞いた話も含まれていますが、サトシの言葉に嘘はないと思います。
更にこのシンオウで神と呼ばれているパルキアやディアルガ、ギラティナやアルセウスとも会っています。」
「アルセウスにまで…!?」
タケシの口からつらつらとあげられていく、伝説のポケモンたちの名前に誰もが驚いたような表情を浮かべた。
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