―5―
「サトシ…!」
「やっと来たわね。
会いたかったわよ。」
急いで来たのか、息を乱しながらシゲルたちを心配そうに見つめるサトシ。
そんなサトシを嘲笑いながらジュピターは、そんな言葉を発した。
「みんなは…関係ないだろッ!?」
「逃げるあんたが悪いのよ!
少し…痛い目にあわせた方が大人しくなるかしら?
行けッ、スカタンク!」
「クソッ、モウカザ…」
「手紙に書いたこと、……忘れたのかしら?」
「……!!!」
ジュピターと戦うために、モンスターボールに手を伸ばしたサトシはジュピターの言葉を聞いて、ぴたりとその動きを止めた。
しかし、手紙の内容を知らないシゲルたちは動きを止めたサトシを訝しげに見つめた。
「サトシ…ッ、何をしてるんだ!
早くポケモンを出して戦うんだ!」
「何をしている!
スカタンクなら、モウカザルの地面技を使えばすむ話だろう!」
「そうよ、サトシ!
モウカザルのスピードだったら…問題ないはずよ!」
「サトシ!戦え!」
「ふふ。
何を言っても無駄よ。
━━命令よ。
あなたのポケモンたちが入ったモンスターボール、外して地面に置きなさい。
そのあとは、こちらに来なさい。
少しでも怪しい動きを見せたら……、わかってるわね?」
「………。」
心底おかしそうに笑いながらジュピターはサトシにそう命令した。
サトシはその命令に抵抗を見せることなく、大人しく従った。
「サトシ…、どうして!?」
「何を…している?!」
「ポケモンを使わなかったら…、サトシに勝ち目はないのよ!?」
「ピカピー!」
シゲルたちがいくら戦うように言ってもサトシはその意思を見せようとはしなかった。
「いい子ね。
でも、今まで…ギンガ団をコケにしてくれた分、痛い目にはあってもらうわよ!」
「え…?」
俯き、ジュピターの指示に従っていたサトシはその言葉に顔をあげた。
「スカタンク、どくどくよ!」
「スカーッ!」
「なッ?!」
「避けたら…どうなるか、わかってるわよね?」
「━━……っ!」
スカタンクにどくどくを指示したジュピター。
慌てて避けようとしたサトシにジュピターは残酷な言葉を吐いた。
その言葉を聞いたサトシはびくりと体を震わせ…、猛毒の霧が漂うその場所から動かず、立ち止まってしまった。
「なにしてるの、サトシ!逃げてーー!」
「サトシッ!」
「ピカピ!」
「何故…奴らの言いなりになる!?」
「逃げろ、サトシッ!」
猛毒の霧が漂うその場所に向かってシゲルたちは叫んだ。
あんな深い毒の霧の中にいたら…、そう考えただけで鳥肌が立った。
「…ふふふ…。
気分がいいわ!ここまで言いなりだと…、いっそ気持ちがいいくらいよ!」
「ふざけるなっ!
サトシにこんなことをするなんて…!許さないぞ!
今すぐ、僕たちと、サトシを解放するんだ!」
高らかに笑うジュピターにシゲルは怒りを露にしながら怒鳴るように言葉を発した。
「……気に入らないわね。
あんたたち…、自分の置かれた立場が分かっているの?
あんたたちは人質なのよ?
そんなでかい口が叩ける立場だと思ってるの?」
「そんなの関係ない!
サトシに…ひどいことしないで!」
「サトシが何をしたって言うんだ!?」
「…早く離せ。」
「……スカタンク、奴らにもどくどくよ。」
人質としての立場をわきまえろ、というジュピターの言葉にシゲルたちは従わなかった。
反抗的な態度を取るシゲルたちが気に食わなかったのか、ジュピターはスカタンクに再び、どくどくを命じた。
捕われ、縛られているシゲルたちが逃げられないことを知った上での攻撃にシゲルたちはギリッと歯を食いしばった。
[
*←前
] | [
次→#
]
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -