―2―
「ハァ…ハァ…ハァハァ!」
「逃がすな!」
「必ず捕まえろ!」
「捜せ!そう遠くへは行ってないはずだ!」
サトシはギンガ団から必死に逃げていた。
ギンガ団が企んでいることが何かまでは分からない。
だが、決していいことではないことは分かっている。
今…、自分が捕まればポケモンたちにも仲間にも迷惑がかかる。
それだけは絶対に嫌だった。
「俺は…どうしたらいいんだよ…。」
深い闇に捕われたような絶望がサトシを襲った。
近くの木にもたれ、ずるずるとしゃがみ込んだサトシの声はひどく不安そうなものだった。
「サトシッ!」
「ピカピ!」
「……ッ!!!」
膝に顔をうずめていたサトシは自分を呼ぶ声にビクリと肩を震わせた。
「よかった…、無事だったんだね。
あまり心配をかけないでくれ、サトシ。」
恐る恐る顔をあげたサトシは、シゲルたちが自分の方に向かって駆けてくるのを見た。
それを見たサトシは慌てて立ち上がり、後退りしながら口を開いた。
「…来るなッ!」
「……サトシ?」
キッとシゲルたちを睨むサトシ。
それはまるで手負いの獣が警戒しているようだった。
シゲルたちを拒絶するような視線を向けるサトシにただ、シゲルたちは戸惑うばかりだった。
***
ロケット団に捕われてしまったサトシを捜し回っていたシゲルたちは、木にもたれかかり顔をうずめるサトシの姿を見つけた。
特にケガもない様子のサトシに安心し、サトシの名前を呼んだ。
しかし、サトシはシゲルたちを拒絶するような視線を向けてきた。
「…助けにきてくれなんて…頼んでない。」
「ちょ、サトシ…本当にどうしちゃったのよ?」
「みんなと旅をするのも今日限りで終わりだ。
俺は…みんなのところには帰らない。」
「サトシ…何を言ってるんだ…?」
「ああ、そうだ。
俺がゲットしたポケモンで欲しいやつがいたらやるよ。
好きにもらってってくれ。俺には必要ないからさ。」
「サトシ。」
「あ、シンジは強いポケモンがほしいんだろ?」
「サトシ!」
「だったらオーキド博士の研究所に電話をしたらそこに俺がゲットしたポケモンがいるから好きに選んで好きに連れて…」
「━━━サトシ!!」
「…ッ!!」
シゲルがサトシの名前を呼んで制止させようとしても、止まることを忘れてしまったかのようにサトシは話し続けた。
そんなサトシをシゲルは名前を強く呼んで無理矢理制止させた。
「…なにがあったんだい?」
「…なにも…ない…。」
「君がポケモンたちをいつだって大切にしていることはここにいる誰もが知ってることなんだ。
いきなり大切な仲間を彼にあげるなんて…、サトシに何かあったことなんて誰の目から見ても明らかじゃないか。」
「………それは…。」
語りかけるように話すシゲルの言葉にサトシは瞳をさ迷わせたあと…、俯いた。
「サトシ、僕たちは君のことを心から心配してる。
…何があったのか…、話してくれないか?
…一人で…苦しまないで、サトシ。
一人で抱え込んだって…苦しいだけだ。
そうだろ、サトシ?」
「……っ!
…しげ…る…。
おれ…、おれ…。」
優しい口調で話しかけるシゲルにサトシはぽろぽろと涙を流した。
心の中に溜め込んでいた色々な思いを吐き出すように泣いた。
シゲルはそんなサトシにゆっくりと近付き…、サトシを優しく抱きしめた。
サトシはシゲルの胸の中で声を押し殺して泣き続けた。
[
*←前
] | [
次→#
]
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -