―1―
「ピカピ…。」
ロケット団に襲われ、再び捕まってしまったサトシ。
シゲルたちが変形してしまって開かなかった扉を何とか開けて部屋に入った頃にはサトシの姿もロケット団の姿もどこにも見当たらなかった。
憔悴しきったピカチュウがそこにいるだけだったが、それだけでサトシは捕まってしまったのだと充分に察してしまった。
「…とにかく、サトシを捜しに行こう。
こんなところで立ち尽くしていてもサトシが帰って来るとは限らない。
助けに行こう。」
「…ピカチュウ、行きましょう?」
「ピカ…。」
ヒカリに諭され、ピカチュウは耳を垂れさげながら頷いた。
「サトシを助けたあと、ロケット団も捕まえて、何を知ってるのか聞き出さなきゃならない。
急ぐよ!」
走り出したシゲルの後に続くように他の面々も走り出した。
全てはサトシを助けだすために…━━。
ただそれだけだった。
***
「━━…見つけたわ。」
「…!!!」
シゲルたちの元には戻れないと、目の前でパチパチと音を立てて燃えるたき火を見つめてぼんやりとしていたサトシは背後から聞こえてきた声に慌てて振り返った。
「また…お前らかよッ!」
そこにいたのは、サトシを狙う…ギンガ団の1人…、ジュピターだった。
ジュピターの後ろには他にも何人かギンガ団がいて、サトシは自分が囲まれていたことにようやく気付いた。
波動を感じることが出来るようになったサトシだったが、ぼんやりしていたため、ギンガ団の存在に気付けなかったのだ。
「大人しく私達に捕まりなさい?
痛い目にはあいたくないでしょ?」
「…ッ、おれは…捕まるわけにはいかないんだ!」
「私達がそんな戯言に耳を貸すとでも思っているの?」
「━━ッ、クソッ!」
「ブイブイッ!」
「ムクホ!」
「ハガッ!」
「ウキャーッ!」
「グライ〜ッ!」
ジリジリと迫ってくるギンガ団にサトシは冷や汗を流しながら睨みつけた。
そんなサトシを守ろうとブイゼルたちがサトシの前に立ち、ギンガ団と対峙した。
「あははっ!
バカねぇ。たった5匹で私達に敵うと思ってるのかしら?」
「ブイブイッ、ブイブー!」
「あら?やる気なのね。
仕方ないわ。
そっちがやる気なら容赦しないわよ?」
「(ダメだ…。
いくらブイゼルたちでも、こんなにたくさんのギンガ団を相手に無事ですむはずがない…。)
…クソッ…!
戻れ、みんなっ!」
「ウキ!?」
「ブイ!?」
「ムクホ!?」
「グライオ!?」
「ハガッ!?」
自分のために、仲間を危険にさらすわけにはいかないと考えたサトシはブイゼルたちをモンスターボールに戻した。
いきなりモンスターボールに戻されたサトシのポケモンたちは驚いたような声をあげながらモンスターボールの中に消えていった。
「賢明な判断ね。
それで?
あなたはどうするの?
ポケモンたちを戻したあなたに勝ち目はないわよ?」
「…こうするんだよッ!」
サトシを追いつめるような言葉を発したジュピターに、サトシは手を前にかざした。
「…なにをするつもり?」
「はどうだんっ!」
「━━なッ!?」
サトシがいきなり放ったのは、はどうだんだった。
予想もしていなかった攻撃にギンガ団たちが怯んだ隙をついて、サトシは踵を返し、立ち去った。
「逃げたわね!?
追いなさい!絶対に逃がすんじゃないわよ!!」
「━━はっ!」
はどうだんを放たれ、辺りに砂埃が舞う中、ジュピターは下っ端たちにサトシを追うように命じた。
「まさか…波動まで使えるようになってたなんて…油断したわ…。
でも…、必ず捕まえるわ。
覚悟しなさい?」
森の中に消えたサトシに向かってジュピターは笑みを浮かべながらそう呟いた。
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