―19―
「みんな…、捜してるかな…?」
深い森の中で響いた声。
それはロケット団から逃げ出したサトシの呟きだった。
「ブイ?」
「あ、ゴメン…。
みんなのことを考えたら…、離れた方がいいのは分かってるんだけど…、心のどこかで捜して…見つけてくれたらいいのにって考えちゃうだよな…。
なんか、矛盾してるよな…。」
「ブイブイっ!」
「慰めてくれてるのか、ブイゼル?
…ありがとう。」
ブイゼルに肩をバシバシ叩かれ、サトシは笑顔を浮かべながらそう返した。
だが、ブイゼルは気付いていた。
その笑顔は心からのものではなく、…無理に作った笑顔なのだということを…。
「食べ物を探しに行ってくれてるモウカザルたちが心配だな…。
どこまで行ったんだろう?」
ブイゼル以外のポケモンたちはサトシのために食べ物を探しに行っていた。
他のポケモンたちを心配してゆっくり立ち上がったサトシは何かに集中するようにそっと目を閉じた。
「ブイブ…?」
不思議そうな表情を浮かべ、サトシを見つめていたブイゼルはサトシの纏う空気が変わったのを感じ取った。
「…もうすぐグライオンが戻ってくるな…。
あとは…ハヤシガメも…。」
「ブイ?」
サトシが呟いた言葉にブイゼルは驚いたように目を見開いた。
そしてそのすぐ後だった。
「グライ〜!」
「ハンガッ!」
それぞれが木の実を抱えながらサトシとブイゼルの元に戻ってきた。
サトシが言った通り、戻ってきたグライオンとハヤシガメを見たブイゼルは信じられないものを見るような表情を浮かべてサトシとグライオンたちを見ていた。
「…少しずつ…、力が目覚め始めてるのか…。
あ、モウカザルとムクホークの波動を感じる…。
あの2人もすぐ戻ってくるな。」
「ブイブ…?」
「驚いてるみたいだな。
でも、俺だって驚いてるんだよ。
なんか…波動を感じられるようになってきたんだ。
これも…“伝説の御子”としての力が目覚めようとしてるからかもな…。」
驚いたようにサトシを見つめるブイゼルの頭を撫でながらサトシは困ったように笑った。
そのすぐ後にムクホークとモウカザルもサトシの元に帰ってきたが、何かを感じ取ったのか、サトシをジッと見つめていた。
そんなポケモンたちに向き直り、サトシは真剣な表情を浮かべながら口を開いた。
「みんな、聞いてほしい。
俺はきっと悪い奴らに狙われることになる。
みんなにも危険がないとは言いきれない。
だから…、出来るならみんなには俺から離れてほし…」
「ムクホー!」
「ハガー!」
「ウキャー!」
「グライオー!」
「ブイブー!」
悲しそうに目を伏せながらポケモンたちに離れるように言おうとしたサトシは途中でポケモンたちに遮られた。
誰一人、サトシのそばを離れようなんて考えてないのだとブイゼルたちは必死にサトシに伝えた。
優しくて温かい、自分のマスターにどこまでもついていくのだと、ブイゼルたちは決めていたのだ。
だから、サトシに最後までそれを言わせなかった。
「うん…。
ありがとう…。俺はみんなを…守るから…。
だから…これからもそばにいてくれよな?」
「ブイ!」
「ハガ!」
「ムクホ!」
「グラ〜イ!」
「ウキ!」
サトシとポケモンたちの絆はまた深いものとなった。
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